ひと夏の恋 (ページ28)

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トリックさんの部屋の扉を開けると、
ぷん、とお酒の匂い…

トリック｢なんだ？｣

サナ｢朝からお酒ですか？｣

トリック｢レディに関係ないだろう｣

‘ 関係ない ’その言葉に胸がズキっと痛む
けど、今は…

サナ｢チップ、泣いてましたよ
チップに謝ってください｣

トリック｢謝る？俺がか？｣

サナ｢そうです、
もしかしたらチップにも否はあったのかも知れませんが、
あんな言い方じゃなくても良かったはずです｣

トリック｢なんだ？チップが可哀想ってか？
1晩チップの所で止まっただけでチップチップと、
尻軽にも程がある｣

サナ｢なっ、そんなんじゃ！
私は元からチップと…｣

トリック｢元から？何が元からって？
船に乗ってから1週間やそこらしか経ってない
それで元からと言われてもな
それに、他の男にだってへらへらしてるじゃないか｣

サナ｢他の男って…｣

トリック｢そうだろう？
ピーターやラビット、サンスプにクック
上げだしたらキリがない｣

サナ｢なんで、なんでトリックさんにそんなこと言われなきゃならないんですか…
私は、私は皆さんと仲良くやろうって
トリックさんに迷惑かけないようにやろうって｣

お世話になってるトリックさんが、
皆さんから何も言われないようにと思って…
私は…！！

ぼろぼろと涙が溢れ出す

サナ｢トリックさんのせいじゃないですか｣

トリック｢俺か？｣

サナ｢街を出たのも、この船に乗ったのも、
全部トリックさんのせいじゃないですか！！
トリックさんが居なきゃ、
チップやピーター、ラビットさんやサンスプさん、クックだって…
私、出会うことなかったじゃないですか｣

トリック｢なら船から降りたらいい
3日後には次の港に着く｣

サナ｢…元からそのつもりでしたから
失礼します｣