story1 ページ3
｢あ、あの、もう帰って貰えませんか？｣
眉をひそめて君は言う。でも、人を傷つけたくないのか、声色は優しいままで。
やっぱり君は優しいね。
ー私君の彼女だったんだよ。
その言葉は、心の奥に留めておいた。
だって、今私がそう言ったって、君は困惑するし、信じないでしょ？
もしかしたら、私のことを危険だと思っちゃうかもしれない。
ハイリスクな賭けには挑みたくないんだ。
臆病でごめんね。
｢ごめんなさい。長居しちゃいました。失礼します。｣
君に向かって頭を下げる。
扉を閉めると、目から涙が溢れてきた。
｢……A…ちゃん？｣
私の顔を誰かが覗き込んできた。
｢……ふ…わ…さん……｣
｢……辛いよね……恋人が自分のことを忘れてるなんて｣
そう言うと、不破さんは小さい子を宥めるように私の頭を撫でた。
｢俺の前だったら、いつでも泣いていいんやからね？｣
彼の優しいに胸が暖かくなる。
余計に涙が出てしまう。
｢Aちゃん、また明日も来るの？｣
｢は…い…｣
毎日明那の病室に行ったら、いつか思い出してくれるかもという願いを抱いている。
そんな訳ないのに。
彼が事故に合ったとき。お医者さんから言われた。
｢三枝さんが記憶を思い出すことは不可能に近いです。もう、戻らないものだと思ってください。｣
｢…なにか、確率があがる方法とかはないんですか？｣
｢それは………三枝さんがこの4年間大切にしてたものや、思い出の場所などを見せてあげることですかね……ですが、ほとんど無意味だと思います。｣
淡々と告げられる事実。その度に胸がズキズキと音を立てた。
なんで、なんで明那なの。
他にもいっぱい人なんているでしょ。
まだ、彼が記憶を無くしてから数時間しか経ってない。なのに、何度泣いたのかわからなくなるほど泣いた。
身体中の水分が全部抜けちゃったと思うくらいに。
病室に会いに行ったら
｢だ、誰ですか？｣
って脅えた顔で言われてさ。まるで、初対面みたく私と接するの。あぁ、本当に忘れちゃったんだな。って現実を突きつけられちゃって。悲しくて、悲しくて。胸が張り裂けそうで。
だけど、君の前では泣きたくないから我慢して。
悲しみは笑顔の裏に隠した。
君が私のことを覚えてなくても、君のことが大好きだから、辛いって分かっても愛に行きたいって思うんだ。
ーだからさ、また明日も病室に行くね。
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なむ(プロフ) - ゆきさま。さん» 前作に引き続きコメントありがとうございます✨最高って言って貰えるのほんと嬉しいです！暫くは、こちらの更新がメインとなりますか、楽しんでいただけると幸いです🤭 (2022年5月19日 0時) (
レス) id: 8d4561857b (このIDを非表示/違反報告)
ゆきさま。(プロフ) - axsaの作品最高すぎてこちらにも飛んできてしまいました、、最初も最高すぎです😭 (2022年5月18日 21時) (レス) @page3 id: 1b51703f3c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむ | 作成日時：2022年5月18日 13時
