モノクロ3【鬼ヶ崎カイコク】

第106話 信じない ページ18

ユウト「どうぞ」

ヒノキ「ありがとうございます」

彼が入れた二人分のコーヒー。彼自身は何も飲まないのか、そのまま自分の目の前に座った。

自分がグイッとコーヒーを飲んだところで、彼が机に肘をつけながら聞いた。

ユウト「よく、他人が出したもんを疑いもなく飲めるよな」

ヒノキ「なにか入っていたのかい？」

ユウト「いや、なんも入ってねーよ」

ヒノキ「じゃあ、いいじゃないか(ﾆｺｯ」

この時、ユウトは思った。

ユウト(こいつ苦手だわ)

ユウト「んで、話ってなんだよ」

ヒノキ「あぁ。吟醸Aさんはここに住んでいるってことであってるかな？」

ユウト「あってる」

ヒノキ「なぜ、君のご両親はここに彼女は住んでいないと言ったのかな？」

ユウト「俺は、初対面なやつにペラペラ喋るほど口は軽くねーんだよ。探偵さん」

ヒノキ「私がなぜ探偵だと？」

ユウト「警察だったら一般人のあんちゃん連れて捜査なんかしねーだろ」

ヒノキ「彼は、私服警官かもしれないよ？」

ユウト「“彼は”ってことはお前は違うってことだろ」

ヒノキ「では、私も私服警官だったら君はどうしたんだい？」

ユウト「俺は警察と記者は信用しねぇって決めてんだよ。もし、アンタらが警察や記者だったら塩ぶっかけて追い返すね」

ヒノキ「おやおや、君はその人たちに恨みでもあるのかい？」

ユウト「あったらなんだよ」

ヒノキ「それは、君のお姉さんもかな？」

ユウト「じゃあ、お前は警察が好きなのか？」

ヒノキ「……」

ユウト「……」

長い口論を続けた中で訪れた静寂。シンヤは頭にハテナを浮かべながら二人を見ていた。

ヒノキ「…帰ろうか、シンヤ君」

シンヤ「えっ、いいんですか」

そう言って席を立ち上がり、玄関に向かう二人。それを黙って見送るユウト。

玄関を出てヒノキは大きく伸びをした。

ヒノキ「あれは、聞き出すのは難しいね」

シンヤ「えっ」

ヒノキ「彼は間違いなく、何かを知ってる。けれど、話せない。いや、話したくないって言うのが正しいかな」

シンヤ「知っているなら聞き出せば…」

ヒノキ「気づいていたかい？」

シンヤ「何をです？」


ヒノキ「彼、こちらが質問をしている側のはずなのに、いつの間にかこちらが事情聴取されている気分だった」


シンヤ「え、じゃあ退出した理由って……」









ヒノキ「いやー、彼は……中々詰将棋が上手いね」

ヒノキは窓から見ているユウトと睨み合うのであった。

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