シアワセノカタチ

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慧｢なに…してんだ…俺｣




手を離したのは俺
君の悲しげな瞳から目を背けたのも、俺、
全部全部、俺が悪い。なのに





慧｢……｣




思わず帽子を深く被り直して出しかけた手を戻した
耳だけは、1音も漏らさないように傾けながら




｢はいこれプランナーさんに連絡しておいたよ｣





彼女の口から発せられる幸せそうな言葉を聞いて
心臓がキュッと痛み
頬に涙が伝う







うわあ、Aの声だ
待ちわびてた俺の大好きな人の声は
聞きたくない言葉を乗せて冬の空に小さな音を出して
そっと溶けていく








幸せになってくれと望んだのに、
それを望まない俺がどこかにいて





慧｢なんだよ、これ｣





行き場を失った手は力が抜けたようにスっと落ちる






キラキラした街並みを背に
来た道を折り返す
より帽子を深く被り直してマスクを上げて






ｶﾞﾁｬ






重い扉を開けるとそこには''キミ''じゃなくて
君がいた






エリナ｢おかえりけいちゃん｣





慧｢ただいま｣





なんだか今日はずっと眠れなかった







部屋のどこを見ても
なにをしていても君との思い出がよぎるから







慧｢結婚…するのか｣








生きていく限り嫌でも年はとるばかりで






結婚という言葉を肌で感じる年になっている自分とふと目が合った

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