悪女に花束を。

疫病神 ページ42

A「………」



視線を下に向けたまま沈黙するAを、しのぶは息を凝らすようにじっと見つめた



し「あ、あの……っ」





傷つけて、ごめんなさい


庇ってくれて、ありがとう





その言葉を、もし次にAに会えたなら必ず最初に言おうと思っていた





それなのに何故か口からでた言葉は



「嫌な人を見てしまいました」



という、謝罪とは真逆の言葉だった





A「ーーえ…?」


Aは地面に縫い付けていた両目をしのぶに移動させ、驚愕の表情を浮かべた


し「はぁ……最悪です。ついてない日ですね、今日は」


見開かれたAの目に、どんどん涙が溜まっていく


し「いえ、貴女のような人に出会った時点で私の人生は不幸に見舞われていたのでしょうね」


A「し、しの…「私の名前を気安く呼ばないでください。この疫病神」


言葉を失っているAを睨み付けながら大股で近づき、しのぶは右手を振り上げた



！！！バシンッ！！！



左頬を叩いた瞬間

痛みに顔を歪めたAを見て、しのぶは何かを堪えるかのように唇を噛み締めた


し「痛いですか？でも、私の心はこれ以上に痛かったんですよ。…ああ、間違えました。痛いのは現在進行形です」


もう一度腕を振り上げ赤くなったAの頬を叩くと、しのぶはドン、とその胸元を押して地面に倒した


A「や、やめて…やめて……！」


ガタガタと震え、涙を流すAをしのぶは冷たい目で見下ろす


し「ふっ、何とも情けない姿ですねえ…それでも本当に柱候補ですか？鬼を五十体倒したというのもどうせ嘘なんでしょう？どんな手を使ってお館様を言いくるめたのですか？」


A「ち、ちが…っ」


し「あ、もしかして体でも使ったんですか？」


しのぶの言葉に、Aからすべての表情が消えた

その瞬間ー…

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