約束【桜庭涼太】 ページ8
「っ!ちょっと降ろして!」
「うわっリョウ!?どうしたんだよ!」
「いいから!」
半場無理矢理車を下りて見覚えしかない背中に駆け寄る。
迷惑をかけるのは百も承知だ。でも、放ってなんかおけない。
「A!!」
『! りょ、くん?』
振り返ったAの髪や服は雨のせいで酷く濡れている。
強引に肩を掴んで抱き寄せると冷たさが俺の体に伝わった。
「なにしてるの……っ 俺今日は会えないって連絡入れたよね…?」
『え?嘘……何もきてなかったけど…』
「…は?いや、そんなはず……」
確かに送ったはずなのに。
そう思いスマホを出して確認すると、Aからのメッセージに既読をつけたまま無視していた。
そうか、コウに呼ばれて急いでいたから送信ボタンを押さずにアプリを閉じたんだ……
「ごめ……俺…」
『……大丈夫?リョウくん濡れてるけど…』
「俺の心配してる場合…?こんな冷えて……普通帰るでしょ?なんで待ってたの…っ」
頬をなでると、冷たさが更に伝わってきて俺の手はすぐに冷え始める。
Aの目を見つめて返事を待っていると、その目にじわりと涙が浮かんだ。
「え…ちょっ、泣かなくても…ああぁ……ごめん、言い過ぎた…」
別に怒っているわけじゃないけど、怒っている風に聞こえるのか、メンバーに注意されていたことを思い出して頭が痛くなる。
どちらかといえば怒られるのは俺の方だ。
デートは俺から誘ったのに、しっかり返信をせずこんな日に外で何時間も待たせて、彼氏失格だ。
これならまだ衛の方がしっかりしているだろう……
「ごめん、ごめんね……」
冷たい体を温めるように抱きしめる。
何度謝っても、俺の心のモヤは晴れなかった。罪悪感がのしかかり、体が重たく感じる。
『リョウくん、謝らなくて大丈夫…だから……来てくれたの嬉しかったよ』
「………あのさ」
『…?』
まるで、これからお別れするかのような声色に気持ちが沈む。
せっかく会えたのに、もう離れるなんて……そんなのは嫌だ。
「これから、Aの家にお邪魔していい?埋め合わせする……」
『え、え!?片付けてない!駄目!』
「別に、気にしないよ。あと寒い……お風呂貸して…」
体に張り付くシャツと髪が気持ち悪い。
暖かいお風呂に一緒に入って、ちゃんと話そう。
Aはあまり怒ってないみたいだし、話せば分かってくれると思う。
「今からコウに話してくる……だから、お邪魔させて?」
続
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作者名:ななせ | 作成日時:2019年2月26日 7時