【募集企画小説】ヨコハマのイレギュラー達【文スト】 (ページ15)

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人生万事塞翁が虎其ノ拾参ページ15

～十五番街、西倉庫～

「……本当にここに現れるんですか？」

完全自￤殺と表紙に書かれた本を読む太宰

何やら大量のメヱルを打ち込んでいる和泉

月を眺めているが眠そうな榊木等に敦は問う

「「「本当だ／だよ」」」

3人に揃ってそう言われるも

中島は心配そうな表情を浮かべた

「…心配はいらんぞ、敦」

「虎があらわれても私達の敵じゃないよ」

「こう見えても“武装探偵社”の一隅だ」

和泉の後に榊木、太宰が続けて述べた

「はは凄いですね

自信のある人は……

僕なんか孤児院でも

ずっと“駄目な奴”って言われてて

そのうえ今日の寝床も

明日の食い扶持も知れない身で」

[天下のどこにもお前の居場所はありはせん]
[この世から消え失せるがいい]

中島の中に孤児院の教師等の言葉が蘇る

「…こんな奴がどこで野垂れ死んだって____

いやいっそ喰われて死んだほうが___」

ポツポツと言葉を零す中島を3人はチラリと見

倉庫の上の開いている戸から見える月を見る

「「そろそろか／かな」｣

《ガタン》

「！

今…そこで物音が！」

「そうだね」

焦り云う中島に対し、太宰は落ち着いて云う

「きっと奴ですよ！」

「風で何か落ちただけだろうな」

和泉はそう答える一方

「ひ人食い虎だ僕を喰いに来たんだ」

中島は虎だと思い込んでいる

「座りなよ敦君

虎はあんな処からは来ないよ」

中島へ榊木が云う

「どどうして分かるんです！」

「そもそも変なんだよ敦君」

「経営が傾いたからって

養護施設が児童を追放するかい?｣

「大昔の農村じゃないんだし」

「そもそも経営が傾いたなら

一人･二人追放したところでどうにもならん

半分程減らし、他所の施設に移すのが筋だ」

「３人共、何を云って__」

__中島の瞳に美しい満月が映る__

「君が街に来たのが2週間前
虎が街に現れたのも2週間前

君が鶴見川べりにいたのが4日前
同じ場所で虎が目撃されたのも4日前」

「国木田さんが云っていたでしょう
“武装探偵社”は異能の力を持つ
輩の寄り合いだって

巷間には知られていないけど
この世には異能の者が少なからずいる

その力で成功する者もいれば
力を制御出来ず、身を滅ぼす者もいる」

「大方施設の奴は虎正体を知っていたが
御前に教えなかったんだろう

御前だけが分かっていなかったのだ

御前も異能の者だ」

「「移身に騎獣を降ろす月下の能力者」」

中島の姿は完全に虎となった