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阿吽之呼吸は途切れない 其ノ参拾弐 ページ25

何方かが果てる時は笑顔で。


そう笑顔で約束していた事を、もう一人の水色髪の少年が、大事そうにお互いを包み込み、笑顔で眠っている少年と少女を見て思い出す。
明るく輝く紫の瞳に涙が溜まっている。

つい十分前の事だ。

少年等の師である鶴丸から、水色髪の少年の元へ一本の電話が入った。


《幼馴染が果てた》。


其のような内容のモノだった。

しかし彼は驚きもせず、又怒声も、泣き声も上げず、只静かな声で「そうですか。」と応えることしか出来なかった。

実際に亡骸を見た。
血だらけで歴戦だった事を思い描かせた。


水色髪の少年は現在高校2年生だ。

その為、所属して居る部活の者達も、急に呼び出された彼の事を不思議に思い着いてきた。
さすればこのザマであった。

「………琳寧、気を確か………に…」

水色髪の少年__氷浦琳寧。異能力『F◎F』。

今は亡き斎恩志双子の幼馴染である。


氷浦を気にかけた金髪の青年……恐らく同じ部活動員なのだろうか。
彼が言葉を発したが、直ぐに言葉は止まった。

「……何が何方かが果てる時は笑顔でだよ、………置いてくなよ……!!」

氷浦の目から、大粒の涙が流れる。


「………莫迦みたいだよね。本当に。」


氷浦達の背後から、声が聞こえる。
彼等は驚く表情を見せたが、特に警戒する者で無いだろうと思ったのか、後退りもせずに声の鳴る方へ顔を動かした。

「星弥…。…こんな良い子達に看取られて嬉しいだろうね。」

右目を黒い前髪で隠し、猫目で丸眼鏡を掛けている青年。
霧雨治樹。大罪の子、霧雨華の兄であり、亡き星弥の相棒だ。

悲しそうな瞳だが、よく見ると怒りに満ち震えている。

「安心して。少年。」

氷浦の心情を察したのか、言葉を発した。

「今、星弥を殺した奴の所には、俺の妹の異能力と………そうだなぁ。カミサマが居る。もーじき……天狗の本気を見れる所なんだ。」

獲物を狩るような鋭い目付きで話を進める。

「少年は頭を冷やして。……まあ、幼馴染が死んで泣くだけで済む子は初めてだけど…。……少年、何者だい?」

何か疑問に思ったのか、氷浦に問う。

「……。」

しかし、氷浦は何も答えない。

「……まあ良いさ。これから辛いだろうけれど……頑張ってね。」

霧雨はコートのポケットに手を入れ、氷浦達に背を向けてそのまま帰って行った。




「……………殺す。」




氷浦の口から、そんな言葉が零れた。

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クシナデソーマ(プロフ) - 更新終わったでおじゃる (2018年12月31日 12時) (レス) id: cf04d087dd (このIDを非表示/違反報告)
クシナデソーマ(プロフ) - 更新するでおじゃる (2018年12月31日 12時) (レス) id: cf04d087dd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナタデココ x他4人 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年8月10日 16時

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