阿吽之呼吸は途切れない 其ノ弐拾陸 ページ19
「…なんの用?私はもう、貴女との関わりはないはずんだけど?」
紅茶を口に含みながら少女、有栖川 心音がため息混じりに口にした。
心音の前に座り、優雅に紅茶を飲んでいる少女はにこやかに笑いながら答えた。
「あら、酷いわね。心音。久しぶりに親友に会えたって云うのに。」
心音の知る限り、今自分の目の前にいる少女──閃耀 優綺は自身に利益のないことはしない主義だ。
親友に会うことなど、優綺にとってはなんの利益もない。ましてや、今となっては苦い思い出しかない元親友だ。
故に、心音は厭な予感しかしていなかった。
「だから、なんの用?って聞いているのよ。答えてくださる?」
優綺は笑む。
何処までも、底のしれない表情で。
「ねぇ、心音?不思議に思わなかったの?いくら仲がいい方ではないとはいえ、私と椛はいるのに征瑤はいない理由。門下から外れた貴女をいきなりお茶会に誘った理由…。」
頭に疑問符を浮かべる心音だったが、すぐに焦った様子で立ち上がった。
「まさか…」
そのまさかだと、云わんばかりに優綺が嗤う。
遠くでふたりを眺めるだけだった椛も近づいてき、今更気づいてしまった心音を嗤った。
「ねぇ、覚えてる?アリス。ボクらはね、裏切り者は許さないんだよ♡」
そう、心音…もとい、アリスは優綺や椛からすれば裏切り者だった。
いきなり黎霞の弟子を辞め、黎霞の義父である晴明に弟子入した時点からその事は決まっていた。
黎霞の弟子達は、特に椛は裏切られることを酷く嫌う。そして、裏切り者には容赦がない。
裏切り者の幸福となるものは、なんだろうと徹底的に潰して魅せた。
「なん、で……!…なぜ星弥に手を出した?!」
珍しく心音が声を荒げ、優綺の胸ぐらを掴む。
依然、優綺は余裕そうな態度を保っていた。
椛も同様。このような状況になっても余裕で入れるほど、ふたりは精神的に強かった。
「理由なんてありませんわ。そうね、強いて云うなら貴女が私たちを裏切ったからかしら。貴女のせいよ、心音。貴女のせいで貴女の最も愛する男は死んだのよ。嗚呼、なんて面白いのかしら。そうは思わない?椛?」
「ほんっと、その通り〜♪」
こんな時だけなぜか協力する優綺と椛。普段は驚くほど仲が悪い。
このふたりにかかれば責任転嫁もなにも思うがままだ。詐欺師にでも転職したらいいと思う。
「だからって、なにも殺すなんて…星弥にはなんの罪もないじゃない…!」
「さぁね。心音が知らないだけじゃない?」
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クシナデソーマ(プロフ) - 更新終わったでおじゃる (2018年12月31日 12時) (レス) id: cf04d087dd (このIDを非表示/違反報告)
クシナデソーマ(プロフ) - 更新するでおじゃる (2018年12月31日 12時) (レス) id: cf04d087dd (このIDを非表示/違反報告)
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