【ナ】醒めない恋で彩って【短編集】

二度の後悔はしたくない/8 ページ6

文字数の関係もあり長めですすみません。
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きっかけは、彼女からの告白だった。

『中島さんのことが、好きです』

彼女は可愛らしい。その若い身には荷が重いであろう仕事も努力でカバーして、それを褒められるとわかりやすく嬉しそうに笑う。そんな純粋さ故か密かに狙う社員もちらほらいるようだと、先日の飲み会で小耳に挟んだ。
ただ、俺は可愛らしいとは思うだけで彼女に対して特にそういった感情は持っていない。気持ちだけは頂きつつも、その場で丁寧に断りを入れた。



色恋沙汰の中心になるのがひどく久しぶりだったので、なんとなく意識の端にいつも彼女がいたのだろうか。それから俺は、気が付くと彼女を見ていたなんてことが多くなった。

同僚と談笑する彼女。
忙しそうに弁当を食べつつキーボードを叩く彼女。
上司に頭を下げる彼女。
廊下をパタパタと走る彼女。
自販機の前で小銭を落として慌てる彼女。

そして最近、彼女の好成績の裏にはたくさんのドジがあったのだと気が付いてからは、ただ眺めているだけでは我慢できなくなって、ついに手を貸し始めた。
彼女は最初こそやはり気まずそうにしていたものの、回を重ねると「ありがとうございます。助かります」と柔らかく微笑むようになった。俺はその笑顔が向けられる度にやりがいを感じていた。多分、あの顔を見るのが楽しみで手伝いをしていたんだと思う。

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