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街灯に照らされたベンチに腰掛ける。
あんなに明確に拒絶の意を示されたのは初めてだった。
私はまだ蘭たんと上手くやれていると、蘭たんと想い合っていると、そう思いたいだけだったのかもしれない。きっと友達はそれを見抜いていた。あれは私のことを思っての三連コンボだったのだ。
じゃあ結局、恋は盲目なんていう使い古されて皺のついた言葉で、私たちの関係も他の恋と同じように片付けられてしまうの? 私たちのした恋はそんなにもくだらないものだったの?
考え出すと涙が出てきて、落ちたそれは黒いアスファルトにより黒い円をいくつも描いた。
「あれ、お姉さん泣いてる?」
突然上から降ってきた声に驚いて顔を上げると、金髪と黒髪の男二人が私の前に立っていた。途端にここが外だということを思い出し慌てて涙を拭う。
「あ、えと、すみません、」
「えーほんとに泣いてるじゃん。もしかして彼氏に泣かされちゃった? そこのカフェでちょっとお茶でもしてスッキリしようよ。奢るからさ、ね?」
ナンパだとわかっていても。彼らにとってはただの常套句だとわかっていても。あまりにも図星を突くものだから『私は彼氏に泣かされた女』という自意識が追い打ちをかけてくる。
もうなんでもいいや。半ば自暴自棄になって、背中に添えられた手の促すままに立ち上がりカフェに向かおうとした。
「お、オイッ!!」
その時、突然そんな裏返った声が聞こえて、三人揃ってそちらを振り向く。
肩で呼吸をする彼は、精一杯の虚勢とたっぷりの愛を持ってそこに立っているのだと、私にはわかった。
「何?」
黒髪の男が低くそう言った瞬間、彼は私たちが驚く間もないまま猛スピードで私たちの方へと突っ込んでくる。そうしてパシリと私の手を取ったかと思うと、勢いそのままに走り続けた。
「逃げるよっ!」
「ちょ、蘭たん!?」
「やば、もうムリ、!」
「え、ええ〜?」
私の元へ来るまでに体力の大半を消耗したらしい彼は、喉からヒューヒューと聞いているだけで苦しくなるような音を出している。普段の運動量から考えればもういつ転んでもおかしくない。
「蘭たん、大丈夫だよ! もう止まろ! もうあの人たち居ないよ!」
曲がり角を二つ曲がったところでそう呼びかけ、私たちは足を止めた。
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静寂(しじま)(プロフ) - エミさん» 返信遅くなりすみません…!ありがとうございます!最近忙しいのとネタ切れで更新できてませんが更新は続けますので気長にお待ち頂けると嬉しいです! (2022年4月13日 0時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
エミ(プロフ) - 静寂様の書かれるお話が凄く好きです…これからも更新楽しみにしています〜!☺ (2022年4月2日 0時) (レス) id: a0e3c6c9d5 (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございますー!楽しんで頂ければ幸いです!🙇♀️ (2022年2月13日 17時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - バレンタインの更新楽しみにしてます! (2022年2月13日 9時) (レス) @page19 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 千寿さん» まさに表現したかったことが伝わったようで良かったです〜!次回ありましたらぜひまたよろしくお願い致します! (2022年1月29日 18時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:静寂(しじま) | 作成日時:2022年1月21日 0時