＊ ページ42
「Aさんのことが、好きです」
今度は解釈の余地なんて無い、確信めいた言葉。手元から顔を上げ見た中島くんの顔は真剣なものに変わっていた。
「返事は今じゃなくてもいいので……」
中島くんの言葉に私が黙り込む、デジャヴみたいな構図。でもさっきと違うのは、緊張している暇すらないってこと。
「わ、私も中島くんのこと好き！」
言葉を続けようとした中島くんを遮るように、私も想いを伝えた。どうにも現実だという気がしないけれど、こんなに願ってもない状況、逃すわけにはいかない。
「そ、それ、ほんと？」
「えっ？」
「俺たち両想いってことでいいん、だよね？」
「う、うん……」
中島くんははあ〜っと大きくため息をつきながら、ふきんを持ったままその場にしゃがみ込む。
「あークソ、夢だったら許さんぞ……」
下から聞こえてきたそんな一言に、何を？ なんて感想が出てきて一人で面白くなってしまう。小さく笑っていると、中島くんが不思議そうな顔でこちらを見上げる。
「ごめん、ふふ。でも夢じゃないよ。私も中島くんが、好き」
さっきは溢れ出る想いに任せて言ってしまったけれど、改めて言うとやっぱり照れる。どんな顔をしているかな、とちらりと中島くんの顔を窺った瞬間、彼は言う。
「だ、抱きしめてもいいですか」
「え！？ いきなり！？」
「ごめん、そりゃ無理だよな。今のは忘れてください」
早口で要求をさっさと取り下げてしまった中島くん。私は三秒前の自分を恨む。「うん」とたった二文字言っていたら、私から強請るような真似はしなくて済んだのに。
「無理なわけないよ。その、私も抱きしめてほしい……」
自分で言っておいて恥ずかしくなって俯いている隙に手を取られ、気付けば中島くんの腕の中にいた。それは抱きしめると言うよりは包み込むと言った方が正しい、そんな優しい抱擁だった。私も同じように、そっと腕を回す。清楚で落ち着く匂いが肺を満たして、幸福感だけが私を包む。細くても女の子と違って固い身体に男性なのだと実感してドキドキした。
鼓膜を打ち鳴らす中島くんの心音が心配になってしまうくらいに速い。それがすごくすごく嬉しかった。
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静寂(しじま)(プロフ) - エミさん» 返信遅くなりすみません…！ありがとうございます！最近忙しいのとネタ切れで更新できてませんが更新は続けますので気長にお待ち頂けると嬉しいです！ (2022年4月13日 0時) (
レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
エミ(プロフ) - 静寂様の書かれるお話が凄く好きです…これからも更新楽しみにしています〜！☺ (2022年4月2日 0時) (レス) id: a0e3c6c9d5 (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございますー！楽しんで頂ければ幸いです！🙇♀️ (2022年2月13日 17時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - バレンタインの更新楽しみにしてます！ (2022年2月13日 9時) (レス) @page19 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 千寿さん» まさに表現したかったことが伝わったようで良かったです〜！次回ありましたらぜひまたよろしくお願い致します！ (2022年1月29日 18時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：静寂(しじま) | 作成日時：2022年1月21日 0時
