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昼食の間、男子は今日の体育の話で大いに盛り上がっていた。けれど、試合中の威勢はどこへやら、愛想笑いとも取れる控えめな態度で無理したように笑っていたすぎるに、一人でお弁当を食べながら親近感を感じて私は少しくすりとした。
でも、体育の時間が終わっても私のところに帰ってこないのは、本当に面白くなかった。


『​あん時動線見えたよな!』

​──そんなん、すぎるは言われんでもわかってる。

​『パスの繋げ方もほんまに良かったわあ』

​──当たり前やん、あんたらとはちゃうんやから。

『最後ドリブルで抜いてったのも良かったよな』

​──せやから、当たりま


「A」
「え、」

驚いて顔を上げれば、誰もいない教室を背景に、すぎるが目の前に立っていた。

「な、なんで」
「んふ、なんでって何? 寝ぼけすぎやて。次、移動やで」

呆れたように笑われて、昼休みはとうに終わったのだとやっと理解する。カバンの中の教科書とペンケースを出しながらふと疑問に思った。
わざわざ起こしてくれたのはとても有難いけど、なんですぎるはこんなところに一人でいるんだろう。

「今日、すぎる英雄なんやろ。他の人達はええの」
「英雄? あー……正直なあ、怖いんよなあ……数人でこう、グイッて来られんの」

せやから逃げてきた、とすぎるは苦笑する。確かに、あの愛想笑いは怖がっていたとも取れるかもしれない。けど。

「けど、いっぱい褒められて嬉しそうにしとったやん」
「まあ、悪い気はしないしなあ」
「じゃあこんなとこおらんでもっと褒められてきたらええやん」

口をついて出てくるのはすぎるを困らせるようなことばかり。子供みたいだ。
これは焼きもちだ。すぎるがすごいなんてことは十数年も前から私の方が先に知っているのに、今日ちょっとその端っこを見たくらいで馬鹿みたいに囃し立てるクラスメイトに対する焼きもちだ。

*→←傍らの太陽/す



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作品ジャンル:恋愛
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静寂(しじま)(プロフ) - エミさん» 返信遅くなりすみません…!ありがとうございます!最近忙しいのとネタ切れで更新できてませんが更新は続けますので気長にお待ち頂けると嬉しいです! (2022年4月13日 0時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
エミ(プロフ) - 静寂様の書かれるお話が凄く好きです…これからも更新楽しみにしています〜!☺ (2022年4月2日 0時) (レス) id: a0e3c6c9d5 (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございますー!楽しんで頂ければ幸いです!🙇‍♀️ (2022年2月13日 17時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - バレンタインの更新楽しみにしてます! (2022年2月13日 9時) (レス) @page19 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 千寿さん» まさに表現したかったことが伝わったようで良かったです〜!次回ありましたらぜひまたよろしくお願い致します! (2022年1月29日 18時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:静寂(しじま) | 作成日時:2022年1月21日 0時

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