傍らの太陽/す ページ34
体育館の開け放たれた扉の外から、ワーワーと指示と応援の混じった沢山の声が聞こえる。天気は快晴。猛暑ではないにしろ、よく必死に砂まみれのボールを追っかけていられるもんだと思うけれど、それを何年も続けている幼馴染はもっとすごいと思う。
そんなふうにボーッとしていたら、コロコロと足元にグラウンドとは別の種類のボールが転がってきて、反射でそれを取った。
「ごめーん」
「ああ、うん……」
話したこともないクラスメイトに手渡して、まもなく試合が再開する。ダムダムとボールが床を打つ衝撃がお尻に響く。それでどういうわけか、参加する気にも、かといって応援する気にもなれない自分の孤独さをひしひしと感じた。
毎年、特に一年生の春は嫌いだ。せっかく作り上げたコミュニティから引きずり出されるから。体育も嫌いだ。いつもは二人で教室のすみっこぐらしのすぎるが、遠くに行ってしまうから。
また、視線を外に戻す。転がってきたボールに気を取られている間にファールがあったみたいで、試合を仕切り直すところだった。審判にペコペコしているのはまさかのすぎるで、思わずなにやってんだ、と小さく笑みが零れる。でも、一生懸命やってきたすぎるが、授業でしかボールに触れない奴らに負けるはずがない。他の上手い人たちとパスを繋いで、徐々にゴールの目前まで近付いて。
「はいった……」
ピーッ! と笛が鳴って、すぎるのところにわらわらと人が集まっていく。
英雄扱いされているのが、自分のことみたいに嬉しい。嬉しいのに、素直に喜べない自分がいる。
「Aさん、次だよ」
「えっ、あ、ご、ごめん」
いつの間にか終わっていたこっちの試合。さっきのクラスメイトに余所行きの声と笑顔で出番を告げられて、仕方なく重い腰を上げた。名残惜しく体についてきた視線の先、すぎるがこっちを見ている気がした。
89人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
静寂(しじま)(プロフ) - エミさん» 返信遅くなりすみません…!ありがとうございます!最近忙しいのとネタ切れで更新できてませんが更新は続けますので気長にお待ち頂けると嬉しいです! (2022年4月13日 0時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
エミ(プロフ) - 静寂様の書かれるお話が凄く好きです…これからも更新楽しみにしています〜!☺ (2022年4月2日 0時) (レス) id: a0e3c6c9d5 (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございますー!楽しんで頂ければ幸いです!🙇♀️ (2022年2月13日 17時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - バレンタインの更新楽しみにしてます! (2022年2月13日 9時) (レス) @page19 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 千寿さん» まさに表現したかったことが伝わったようで良かったです〜!次回ありましたらぜひまたよろしくお願い致します! (2022年1月29日 18時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:静寂(しじま) | 作成日時:2022年1月21日 0時