【ナ】醒めない恋で彩って【短編集】

愛しい犯行/す ページ27

匂いフェチの夢主
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付き合って1年くらいの彼氏の家に、一人取り残された私。今日は泊まりでお家デートの予定だったのだが、部屋に入るや否や、家主は急用だとかで申し訳なさそうにしながらも出て行ってしまった。まあ、かかって来た電話を取ってからのあの表情と慌て様を見てしまっては、ワガママなんて言えないけれど。

すぐ帰るから！ 適当にくつろいでてもらってええから！ とは彼の伝言だが、慣れない環境でくつろぐ気にはなれず、とりあえず私は部屋をぐるりと見回してみる。綺麗に整頓されてはいるものの、普段の様子を見るに昨日急いで片付けたのだろうなと少し意地悪な推測をした。だが実際その証拠に、クローゼットの隙間からはTシャツの端がちょっぴり飛び出している。
一度気が付くと気になってしまう性質(たち)の私は、数秒迷った末に心の中で断りを入れてからクローゼットを開けた。
途端、ふわりと舞う大好きな香りに胸がきゅんとする。すん、と息を吸えば何だかすごくいけないことをしているような気分になってしまって、でももう一度だけ、と思ってしまって。何度も吸ったり吐いたりしている内に罪悪感が薄れてしまった私は、綺麗にしまうつもりだったTシャツを取り出して、それからぎゅっと抱き締めた。



すきだな。はやく帰ってこないかな。

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