平行線/蘭 ページ18
《蘭視点》
俺、彼女できたんだけどさ。
帰り道で何気なくそう告げた時、Aは足を止めて、「ばかじゃないの」と吐き捨てるように言った。
「彼女いるのに女友達と帰るとか、何考えてんの」
「だってAは別じゃん」
一瞬満更でもなさそうな顔をしたのは多分、俺の気のせい。
「どっちから」
「あっち」
「へえ。……その子のこと、好きだったの」
「え? あーうん、まあ」
「なにそれ、はっきりしろ」
だって言えるわけがない。
俺の好きな子がこうして毎日下校する仲からいつになっても進展させてくれないから、忘れるために彼女作ったとか。あとは俺がたまたま向けられた純粋な好意を利用してしまうような、最低な男だとか。
「まあでも、よかったじゃん」
Aはそう言うと再び歩き始めた。俺も横に並んでついていく。
なんにもよくない。
だってそんな簡単に祝福できてしまうくらい、俺のことはなんとも思ってないってことでしょ。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
《夢主視点》
「俺、彼女できたんだけどさ」
帰り道、急にそんなことを言われて思わず足が止まった。あまりに突然のことすぎて、ショックを受けるよりも先に「ばかじゃないの」と虚勢を張ってしまった。
「彼女いるのに女友達と帰るとか、何考えてんの」
「だってAは別じゃん」
遅れて胸が痛み始めてきたところに、トドメを刺すみたいに飛んできた言葉。特に意味はなく言ってるんだよな、と思うと同時に、そんな素直なところも好きだななんてあまりに盲目的で場違いな感想が浮かんで消える。特別扱いするみたいな言い方をされて危うくにやけそうになったのは、上手く誤魔化しきれていただろうか。
「どっちから」
「あっち」
「へえ。……その子のこと、好きだったの」
「え? あーうん、まあ」
「なにそれ、はっきりしろ」
好きなら好きってはっきり言ってよ。付け入る隙なんてないくらいラブラブだって示してくれた方が随分気が楽なのに。中途半端にワンチャンなんて、信じさせないで。
「まあでも、よかったじゃん」
負けた私にできることなんて、あとは背中を押すくらい。恋を応援してあげられる優しい女を演じて、このどす黒い気持ちは絶対に隠し通すことが、せめて友達で居続けるための唯一の方法。
止まっていた歩みを再び進めた。心はまだ、置いてけぼりだった。
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静寂(しじま)(プロフ) - エミさん» 返信遅くなりすみません…!ありがとうございます!最近忙しいのとネタ切れで更新できてませんが更新は続けますので気長にお待ち頂けると嬉しいです! (2022年4月13日 0時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
エミ(プロフ) - 静寂様の書かれるお話が凄く好きです…これからも更新楽しみにしています〜!☺ (2022年4月2日 0時) (レス) id: a0e3c6c9d5 (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございますー!楽しんで頂ければ幸いです!🙇♀️ (2022年2月13日 17時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - バレンタインの更新楽しみにしてます! (2022年2月13日 9時) (レス) @page19 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 千寿さん» まさに表現したかったことが伝わったようで良かったです〜!次回ありましたらぜひまたよろしくお願い致します! (2022年1月29日 18時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:静寂(しじま) | 作成日時:2022年1月21日 0時