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結果は言うまでもない。時々まぐれで当たることはあってもほぼ一方的にボコボコにされて、試合はあっけなく終了した。
「あーーもぉーーっ!!!!」
「じゃ、頂きます。すいませんけど」
『^^』みたいな笑みを浮かべて、しゅーさんは雪見だいふくの箱に手を伸ばす。私はというとうずくまって悔しさを床にぶつけていた。しゅーさんなんか下の人から苦情来ちゃえばいいんだ。
「どうしてだよォっ……」
「俺も別に強いわけじゃないんだけどな」
「うざー!」
「いやぁまぁ、Aちゃんが弱いというか……単純に」
すっかり勝ち誇った口調で言うものだから、ますます悔しくなってきた。もう雪見だいふくとか正直どうでもいい。一回でいいからこの気持ちを味わわせてやりたい。
奮起の一発を床に叩き込もうとした時「Aちゃん」と呼ばれて顔を上げた。
「どうぞ」
「え」
「え? どうぞ」
しゅーさんの手には雪見だいふく。それが私に向かって差し出されている。
「くれるの?」
「あ、いらない?」
「いやいるけど! なんで? そんな優しかったっけ?」
「失礼だなあ、俺かなり優しいでしょ」
やっぱりやめようかな、と口を尖らせるものだから、慌ててしゅーさんのいい所を高速詠唱したら笑われた。
でも嬉しい。お礼を言って受け取ろうとすると引っ込められたので文句を言いかけたが、どうやら口を開けろと言いたいらしい。若干複雑な気持ちになりつつも半分齧りつけば、少し粉っぽい餅と冷たいバニラがいっぱいに広がった。
「うん、うまいわ」
私が幸福感に浸る中、そんな聞き捨てならない一言が横から聞こえた。急いで飲み込んで、ピックだけを持つしゅーさんの手を掴む。
「え、ちょっと! くれるって」
「え? あげたじゃん」
「いや半分……」
「だってこれ元々勝った俺のでしょ?」
そういうとこが優しくないって言ってるんだよ! と思いつつも、多分しゅーさんに悪気はないんだろうと長年の勘は言っていた。刺されこそしてないが、彼のナイフが鞘から出たのを見た気がする。
「しゅーさん。もっかい」
しかしそうは言っても納得のいかない私は再戦を申し込んだ。しゅーさんはニタニタしながら広げたお菓子を眺めている。
「次は何賭けんの?」
「もう賭けはしない。しゅーさんをボコボコにすることだけ考える」
「エェ? まあ、できるならどうぞ」
その後、勝てたかどうかの話については私のプライドに関わるのでノーコメント。
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静寂(しじま)(プロフ) - エミさん» 返信遅くなりすみません…!ありがとうございます!最近忙しいのとネタ切れで更新できてませんが更新は続けますので気長にお待ち頂けると嬉しいです! (2022年4月13日 0時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
エミ(プロフ) - 静寂様の書かれるお話が凄く好きです…これからも更新楽しみにしています〜!☺ (2022年4月2日 0時) (レス) id: a0e3c6c9d5 (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございますー!楽しんで頂ければ幸いです!🙇♀️ (2022年2月13日 17時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - バレンタインの更新楽しみにしてます! (2022年2月13日 9時) (レス) @page19 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 千寿さん» まさに表現したかったことが伝わったようで良かったです〜!次回ありましたらぜひまたよろしくお願い致します! (2022年1月29日 18時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:静寂(しじま) | 作成日時:2022年1月21日 0時