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中島くんは図書部だという情報をゲットした私は、翌日、放課後の図書室を訪れた。あれは中学時代の親友に貰った消しゴムでかなり大事にしているものだから、どうしてもお礼がしたかったのだ。

ドアをそっと開けて、音もなくそっと閉める。吹奏楽部の練習する曲目がはっきりとわかるくらいに、室内は静まり返っていた。

図書部ということはカウンターにいるはず。そう思って見れば、案の定彼はそこにいた。

「すみませ……あれ、」

しかし彼は、私が近寄っても開いた本から顔をあげようともしない。不思議に思って少し観察してみると、どうやら項垂れたまま寝ているようだった。

どうしよう。

本を返すなら他の部員でもいいかもしれないが、私は中島くんに用事がある。個人的な要件なので人に頼むわけにもいかないし、そもそもこの場には中島くんの他には私しかいなかった。

「あの、中島くん。起きてー……」

誰もいないとはいえ図書室で大声を出すのはなんとなく憚られて、囁くように声をかける。
当然起きない中島くんに、やっぱりお礼なんかしに来なきゃ良かったかな、と罰当たりな考えが浮かんだ時、彼が突然顔を上げた。

「わぁっ!」
「うわ! え、え!?」

驚かしたのはそっちのくせに、中島くんも共鳴するように大声を出した。

「びっっっっくりしたあ……」
「ご、ごめんなさい、あの……貸出ですか? それとも返却ですか、?」

慌ててバーコードリーダーに手をかける彼は、もう忘れてしまったのだろうか。

「えっと、ちがくて」
「……? ……あ、ああ! 昨日の」
「あ、良かったー、覚えててくれてたんだ。あっあのこれ、消しゴムのお礼です」

持参した紙袋を差し出す。椅子に座っていて高さがいつもよりない分、そこそこ落ち着いて手渡すことができた。

「え、お礼? そんな、あれくらい別にいいよ」
「ううん、大事なものだったから」

ずいと差し出せば、中島くんは遠慮しながらも貰ってくれた。開けていい? と聞かれたのでどうぞと頷く。

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作品ジャンル:恋愛
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静寂(しじま)(プロフ) - エミさん» 返信遅くなりすみません…!ありがとうございます!最近忙しいのとネタ切れで更新できてませんが更新は続けますので気長にお待ち頂けると嬉しいです! (2022年4月13日 0時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
エミ(プロフ) - 静寂様の書かれるお話が凄く好きです…これからも更新楽しみにしています〜!☺ (2022年4月2日 0時) (レス) id: a0e3c6c9d5 (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございますー!楽しんで頂ければ幸いです!🙇‍♀️ (2022年2月13日 17時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - バレンタインの更新楽しみにしてます! (2022年2月13日 9時) (レス) @page19 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 千寿さん» まさに表現したかったことが伝わったようで良かったです〜!次回ありましたらぜひまたよろしくお願い致します! (2022年1月29日 18時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:静寂(しじま) | 作成日時:2022年1月21日 0時

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