◆グラデーション/8 ページ13
高校の入学式の時、前列に座るクラスに文字通り頭一つ抜きん出ていた男子生徒がいた。どう見ても高校一年生の規格から外れた身長が衝撃的で、それからずっと記憶に強く残っていたのだけれど。
．
次の授業のため、廊下を友達と並んで歩く。話題は昨日のテレビの話とか、中学と違って板書が速くてきついとか、そんなたわいもないこと。
その時、たまたま進行方向にいた例の巨人と目が合った。咄嗟に目を逸らしてしまったけれど、視界の端から何かが近付いてくるのに気が付いて視線を戻す。
近付いてきていたのは他でもない彼だった。長い足のおかげでどんどん距離は縮まって、心の準備をする間もなくあっという間に目の前まで来てしまう。
「えっえっえっ」
「あの、これ」
見た目の圧の割には繊細な声と共に開かれた掌には、数日前から探していた消しゴムが乗っていた。
「あ……！」
「この間、図書室で勉強してたでしょ。帰った後に落ちてるの気が付いて、しばらく渡す機会を窺ってたんだけれど」
「ありがとう、ずっと探してたの」
彼は本当にこれを渡しに来ただけのようで、私の手に消しゴムを落とすとさっさと自分のクラスへと戻って行った。
「やっぱでかいね、中島」
「うん……なかしまくん、っていうの？ あの人」
「知らなかったんだ。そうだよ。中島八雄」
「ふーん……」
結果的に中島くんはただのいい人だったけれど、こっちにずんずん向かってきた時は正直かなり怖かった。元から男子とつるむ方ではないし、ていうか人というよりもはや壁でしょ、あれ。なんかちょっと口調もぶっきらぼうだし。
渡された消しゴムは生ぬるかった。私を探してこれ握ったままウロウロしてたのかな、なんて考える。もしそうだとしたら、どこかちぐはぐな外見と中身が何だかおかしい。でもそんなのは自分の作り上げたキャラクターに過ぎないわけで、『巨人』から上書きされた『中島くん』はやっぱり怖かった。
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静寂(しじま)(プロフ) - エミさん» 返信遅くなりすみません…！ありがとうございます！最近忙しいのとネタ切れで更新できてませんが更新は続けますので気長にお待ち頂けると嬉しいです！ (2022年4月13日 0時) (
レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
エミ(プロフ) - 静寂様の書かれるお話が凄く好きです…これからも更新楽しみにしています〜！☺ (2022年4月2日 0時) (レス) id: a0e3c6c9d5 (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 咲世さん» コメントありがとうございますー！楽しんで頂ければ幸いです！🙇♀️ (2022年2月13日 17時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
咲世(プロフ) - バレンタインの更新楽しみにしてます！ (2022年2月13日 9時) (レス) @page19 id: d952fb547f (このIDを非表示/違反報告)
静寂(しじま)(プロフ) - 千寿さん» まさに表現したかったことが伝わったようで良かったです〜！次回ありましたらぜひまたよろしくお願い致します！ (2022年1月29日 18時) (レス) id: 8344300b59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：静寂(しじま) | 作成日時：2022年1月21日 0時
