標的145 信じる ページ50
手入れを終えたあと、皆盛大に宴をあげていた。
次郎や日本号が嬉しそうに酒を飲んでいる。この間私が入浴中の時に酔っ払って人の姿で入り込み、1週間禁酒の刑を出したから相当酒が美味く感じるんだろう。
すると隣に誰か座った気配を感じた。
「お前は飲まないのか？」
大包平の言う通り、私のコップには酒ではなくオレンジジュースが入っていた。
『今の日本は酒や煙草は二十歳までと決まってるんだ』
「人間は面倒なことをするな」
確かに人間には面倒なルールが多いと私も思う。でも少しの違和感を持たれたら困るから、ある程度は守らせているが。
『子供の成長を害するらしい。妊婦も飲んじゃいけない』
「‥‥短刀は？」
『短刀は‥‥って、ここにいる皆んな何百年も長生きしてるだろ。あとお前酔ってるな？』
「酔って‥‥ない‥‥」
と言っておきながら顔はほんのり赤くて、つり上がった目は下に垂れていた。
ドロンッ！
キュ〰〰ン‥‥
大包平は酔った勢いで犬の姿になり、私の膝の上で寝てしまった。
『大包平は意外と酒に弱いのか？』
「先程次郎太刀に絡まれて、かなりの量の酒を飲まされておったぞ」
『次郎め‥‥絡み酒は程々にしろと言ったのに』
今なんか数珠丸に絡んでいる。
「今日の太刀筋、なかなか良かった。大包平はこれからも伸びるだろうな」
私の膝で気持ちよさそうに寝る大包平を見て、三日月は優しく頭を撫でた。
『三日月‥‥明日から鶯丸と1週間畑当番の刑な。大包平に一通りの作業を教えてやれ』
あの鉄棒の時、並中に入ってから私が使い方を説明した。ましてや、体の大きい刀剣男士は危ないからダメだと釘を刺していた。
アレは完全にわざとだ。わざと大包平に間違った使い方を教え込んだのだ。
数珠丸？あれは“世間話”しただけだ。
「ははは、手厳しいな」
『私があの時来なかったらどうするつもりだったんだ？』
心で会話するのは出来るが、位置を把握することは出来ない。それに契約しても彼らか私が拒否すれば呼びかけは一切届かない。
「なに、俺達を大事に想っている主は呼びかけなんぞ使わなくても必ず来る、と信じただけだ」
『‥‥よくそんなことを本人の前で言えるな』
大包平から臭う酒の臭いで、私も少し酔った気分になった。
「主、照れておるのか？」
『この前みたいに掃除機で吸い込むぞ』
「ははは」
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作者名：☆にゃんロック☆ | 作成日時：2019年3月14日 22時
