標的134 勘違い男 ページ39
「‥‥おい、この部屋は何をしている所だ」
中を除けば沢山の人間共が座っていた。皆一番奥に立つ男が書いた字を一生懸命書き写しているように見える。
今側にいるのが三日月宗近と鶯丸しかいない故、意地でも天下五剣である三日月宗近には頼りたくなかった。
「ここは教室と言ってな。前に立っている先生から学を学びに来ているんだ」
「な‥‥この部屋全部か⁈」
一体何人もの人間に学を教えるつもりなんだ⁉
「これこれ大包平よ、今は授業中だ。そんなに大声で叫べば‥‥」
「先生ー、廊下に何か居ません?」
ガラッ‼
「おいセンセイとやらが来てしまうぞ‼」
「安心しろ、取って喰われたりせん」
センセイがキョウシツから顔だけ出して廊下を覗き、俺達を追い払う事もなくただ暫く見つめて、そのまま中へ帰ってしまった。
「あー、黒崎さんの犬だよ。三匹で探検中だ」
センセイが伝えた途端、中にいた人間達はなんだとか可愛いなどと言って全く気にも留めていなかった。そして何事も無かったかのように、ジュギョウが進められた。
***
『‥‥あ!しまった、あの2人に案内役させてしまった‼』
間違った内容の資料を返却する箱に入れていると、間違いと言う言葉からある事を思い出した。
「あの2匹に何か問題でも?」
確認し終えた最後の書類に判子を押し付けた恭弥。まるで心配する事は無いとでも言いたいような言い方だった。
『前に、短刀達に読み聞かせした桃太郎のお供が龍、九尾、鵺と話した2人だぞ?』
何その妖怪伝奇譚な桃太郎‥‥と呟く恭弥。うん、私もそう思った。結局最後は一期一振に任せたしな。それよりあやふやな記憶力のあの2人に任せると変な情報を吹き込まれていないと良いが‥‥。
時計を見ると休憩も含めて、3時間も経っている。大包平が心配で堪らない、だがまだ処理し切れていない書類もあるのに‥‥。
「さっさと行ったら?もう君がいなくても終わるしね」
私ですら少し大変な量なのに、遠回しに大包平の元へ行くように促してくれる恭弥に、少し呼吸が出来なくなった。
『恭弥‥‥ありがとう。すぐに戻るから‼』
リードを握り急いで応接室から出た。
***
まだ授業中なので声には出さず、呼びかけてみても誰も反応してくれない。
‥‥最後はグラウンドだけか。
グラウンドに出ると、この時間は誰一人使っていない様子。
だがその奥にいたのは、後ろ足で鉄棒にフラフラと乗り歩く大包平の姿だった。
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作者名:☆にゃんロック☆ | 作成日時:2019年3月14日 22時