黒く美しい少女は“ヴァリアー編Secondo” (ページ12)

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#3 ページ12

『ふん‼』

Aは綺麗な脚で曲線を描くように男の顔を蹴った。

「ガッ‼」

男は壁に頭をぶつけたのか、ピクリとも動かなかった。Aの周りには、残り2人の男達が倒れていた。

幸いあの男達は武器を持っておらず、肉弾戦になったが体術を心得ていたのかあっさり倒してしまった。

『力技で無ければ、女の私でもお前達を気絶させるのは容易い。この間お前の仲間を襲ったのは、他のヤクザだ。それに、トンファー使いのアイツが銃や刃物で殺すわけが無いだろう‥‥浅はかな知識で人を犯人呼ばわりするとは、恥を知れ』

「そんじゃ後は任せときな、主。こいつらにとっておきの驚きを与えてやるぜ！」

見知らぬ真っ白な男が急に出て来て、男達を縄で縛り、男達を引きずってどこかへ行ってしまった。

『恭弥‥‥心配したぞ‥‥』

僕を縛った縄を解くと、優しく抱き締めた。何故かその言葉に酷く胸が苦しくなった。

『すまなかった。お前をもっと見ていればこんなことには‥‥』

悲しそうにする顔を見るのが何故か嫌でつい勝手に口が動いた。

「‥‥別に気にして無いから‥‥その‥‥助けて、くれて‥‥ありがと‥‥」

Aは大きく目を開くとああ、と言って、僕の手を握った。

それから僕等は手を繋いだまま並中に戻った。見上げれば、空は赤色に染まっていた。

***
目の前に出された小さな誕生日ケーキ、上にヒバードという鳥と並中の旗が立てられている。チョコのプレートには“恭弥Happy Birthday”と書かれた文字が‥‥これA一人で作ったの？

「‥‥いいの？食べても」

『予備のケーキがあるから問題ない。それにお前の誕生日なんだから、ダメなわけ無いだろ？』

僕は恐る恐るフォークを取り、フォークで少し切ってケーキを口に入れた。

「‼‥‥美味しい」

あまりの美味しさに思わず呟いてしまった。Aは微笑みながら見てるので僕は顔を逸らす。そんな顔されると、なんだか調子狂う。

『ふふ、よかった。お前がそんなに美味しそうに食べてくれるなら、作った甲斐がある』

「ねえ、今度は抹茶ケーキ作ってよ」

『‥‥やっぱり、今と変わらないなお前は』

ケーキを食べるのに夢中になっていた為なんて言ったのか聞こえなかった。

「ご馳走さま」

Aは皿を洗ってくると言って部屋を後にした。一人ソファでくつろいでいると、

‥‥あれ‥‥ケーキ食べ終わったら、なんだか眠く‥‥。

僕の視界は暗転した。