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なるべく人が少ない道を通りながら商店街を回っていく。恭弥は表情には出してはいないものの、店や町並みをずっと眺めながら歩いている。
“並盛町を見て回る”
突然の言葉に驚いたが、どうやらこの頃の彼は、外に出ることを許されていなかったようで殆ど屋敷で過ごしていたらしい。
折角自由に動き回れる訳だしと私は私と離れて行動しなければ良いと言った。彼は少し嫌がったが、渋々了承した。
「並盛町ってこんな場所だったんだね」
『まあ、やや治安は悪いけどな。最近ヤクザの行動が目立ち始めているし、あまり離れないでく‥‥て』
商店街の店並みを眺めながら恭弥を見ると、さっきまで私の隣に歩いていた恭弥は何処にも居なかった。
***
ドサッ‼
「っく‼」
突然僕の口元を抑えて攫われた僕をぞんざいに扱い、荷物の様に床に投げつけられた。
「どうです?似てませんか?懐にトンファーまで仕込んでありますし」
シャツの襟を立てた男が首筋に薔薇の刺青を入れた男に敬語を使う辺り、手下の立場なのだろう。
「確かに似てる‥‥まさか並中風鬼委員長のヒバリに弟がいたとはな‥‥」
刺青の男は片手に持つ写真と僕を交互に見て、僕のことをヒバリの弟だと言う。この男の言うヒバリは多分大人の僕のことだ。
「最近俺らの営業してた店が一晩に三つもやられてな‥‥従業員や直属の部下まで全員殺されたんだよ。お前の兄ちゃんがやったんだろ、居場所教えろ」
「知らないよ」
ガッ‼
頬が痛み骨まで染み込み、口の中が切れ鉄の味が広がっていく。刺青の男は蹴り上げた足を下ろした。
「さっさと吐けクソガキ、こちとら我儘坊ちゃんに優しくするほど良い人間じゃねぇんだ」
誰が我儘坊ちゃんだ、咬み殺してやる‥‥。
でも武器であるトンファーを奪われ、腕と足に縄で縛られたこの状態では脱出は不可能だ。
「あーあ、あの一緒にいた女も連れてこればよかったな‥‥美人で中学生にしては、胸も尻もデカくて良いんスよ〜」
僕を攫った男はなんだかウザそうな話し方で呟く。女‥‥Aの事だ。
「美人の中学生‥‥そいつは確か黒崎Aとか言う奴じゃないか?噂じゃ恋仲だとか」
シャツの男の言葉に驚く。大人の僕が彼女と付き合ってるなんて信じられなかった。
「なら弟と一緒に人質にすれば出てくるだろう、捕まえて来い」
『そんな事しても彼奴は来ないぞ』
驚いて声のする方を向けば、入り口のドア付近の椅子に足を組んで座るAがいた。
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作者名:☆にゃんロック☆ | 作成日時:2019年3月14日 22時