実参拾 ページ30
リクオが帰って来たのは思ったよりも早かった。
随分と疲れている様だったので、Aが抱き上げて彼の蒲団まで運ぼうとする。すると首無が代わると云い出したので、Aが疲れているでしょうと返し、尚不満そうな顔をした彼に「少しは姉らしい事させて」と云えば食い下がる事はなかった。
更に若菜に戻った事を知らせる様に云う。
「御母様は御心配してらしたわ。御父様と御祖父様はそうでもなかった様だけど」
「承知しました。＿＿＿＿＿＿納豆小僧、付き添うんだ」
軽く返事をした納豆小僧に附いて行く。納豆小僧は通らねばならぬ襖を開閉したり段差に注意をしたりと大いに役立った。
そしてリクオを蒲団に寝かせて先刻の部屋迄戻る。
「ああ〜、疲れました……是から炊事かあ…………えっ、A様っ？！」
「御帰りなさい、氷麗さん。御疲れ様」
「えへへ、有り難う御座います！ っじゃなくて！ 何故いらっしゃるのですか！？」
「だって退屈なんですもの。其れに数年も寝たら体調は大分良くなったわ。御父様だってもう遊んでらっしゃるし」
「そりゃそうですけど……！」
「『慣れ』って有るのよ。毒だって少しずつ飲めば耐性が付くだけだわ」
澄まし顔で持論を展開するAに、氷麗がぐぬぬ、と肩を怒らせる。でも本心ではAが動ける様に成って嬉しいのか、無理矢理蒲団に戻そうとする気配は無い。
炊事も代わるわ、と哂うA。
「えええ？！ そ、そんな事！」
「あら、
慥かにAと若菜は数年一緒に何かをする事が無かった。若菜はいちばんAの看病をして呉れたが、其れだけで母娘の時間が埋まるだろうか。否、埋まらぬ。Aは愛を返したかった。
最終的に氷麗が折れ、Aはとても明るい心持で台所へ向かう。
其処には既に母が居て、明日の朝食の準備をしていた。毛倡妓と目が合い、吃驚された後、空気を読んだ毛倡妓が微笑んで出て行った。
「毛倡妓ちゃん、味付け是で良い？ ………………っ、Aちゃん？」
「はい、Aです御母様。あたしが見ても善いかしら」
「ええ、ええ、勿論よ…………！」
若菜は口を両手で覆って微笑んだ。目許が微かに光っている。Aは気付かぬ振りをして、母との穏やかな時間を過ごした。
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リオン - 更新並びに返事が遅くなってしまい申し訳ありません。少しずつですが頑張らせて頂きたいと存じます。 (2019年8月14日 10時) (
レス) id: 49ae8b1adf (このIDを非表示/違反報告)
みな - 続きが早く見たいです！ (2019年7月22日 21時) (レス) id: 14e40db715 (このIDを非表示/違反報告)
リオン - 美闇さん» コメントありがとうございます。遅くなって申し訳ありません。励みになります。頑張ります！ (2019年6月24日 16時) (レス) id: bdce8ce1ba (このIDを非表示/違反報告)
美闇 - ハマった('ω')これからも頑張って下さい！ (2019年6月19日 22時) (レス) id: 9b2e6e7bfa (このIDを非表示/違反報告)
リオン - 桜さん» コメントありがとうございます。頑張ります！ (2019年6月9日 14時) (レス) id: 0d22f7a27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リオン | 作成日時：2019年1月11日 22時
