実拾捌 ページ18
其れから幾年かの月日が経った。奴良リクオが自由に歩き回り、言葉を喋る様に為った頃。山吹A改め奴良Aはすっかり奴良組に馴染んで居た。
あんなにも険悪にして居た首無はAを認め敬う様になり、最近は青田坊や黒田坊と棒切れを振り回して遊ぶ様に為った奴良A二百歳弱。未だにAを着せ替え人形にしようとする毛倡妓や雪女から逃げる等、昔の大人しい御淑やかな少女は居なかった。
しかし其の美しさや礼儀の正しさは変わらなかった。全く鯉伴に似たのか山吹乙女に似たのか判らぬ女である。
「おねーちゃん、あそぼ」
「リクオ君。好いよ、今日は何して遊ぶ？」
「おはなみにいこっ」
「はいはい、解ったよ……其れじゃ御父様も呼んで来ようか」
必死にせがむリクオに苦笑し、リクオを抱き上げて鯉伴の許に行く。鯉伴は此の時間、自室に居る筈だ。そう考えて長い廊下を歩く。
襖の前で「失礼します」と声を掛けて襖を開く。そう云う礼儀正しさは相変わらず、もう何処に嫁に出しても恥ずかしくない位だ。尤も、過保護と化した鯉伴や若菜が赦す筈も無いのだが。
「御父様、いらっしゃる？」
「居るよ。如何したんだい、Aもリクオも」
「此れから、お花を見にゆくから、御父様も如何かなって思ったの。今の季節は山吹も綺麗でしょうから、行きましょうよ」
にこにこと笑顔で話すAに目を細め、鯉伴は行くと返事をした。リクオは喜び、早く早くと急かす。Aはまた苦笑し、鯉伴に「待ってるね」と残して玄関へと急いだ。
常に和服のAは、玄関で下駄を履く。唐突に背中を悪寒が襲った。Aはぶるりと身震いして、辺りを見回す。
「……なんだか、嫌な予感がするわ」
「いやなよかん？」
「そう、嫌な予感。ねえ、やっぱり今日は止めない？」
「どうして？」
無邪気なリクオは不満そうだ。だがAには判る。此れは間違いなく嫌な予感。長く生きると其の様な事が判る様に為るのだ。
しかし此の嫌な予感の正体が分からない。そうして居る内に、準備を終えた鯉伴が来て仕舞った。
「如何した、行かないのかい」
「ほら、お父さんもきたよ」
「………………そうね、行きましょうか」
家を出ると悪寒は増した。山吹に近づく程に悪寒は増していく。顔色の悪いAを鯉伴は気遣うが、引き返そうとはしなかった。
そして出会う。
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リオン - 更新並びに返事が遅くなってしまい申し訳ありません。少しずつですが頑張らせて頂きたいと存じます。 (2019年8月14日 10時) (
レス) id: 49ae8b1adf (このIDを非表示/違反報告)
みな - 続きが早く見たいです！ (2019年7月22日 21時) (レス) id: 14e40db715 (このIDを非表示/違反報告)
リオン - 美闇さん» コメントありがとうございます。遅くなって申し訳ありません。励みになります。頑張ります！ (2019年6月24日 16時) (レス) id: bdce8ce1ba (このIDを非表示/違反報告)
美闇 - ハマった('ω')これからも頑張って下さい！ (2019年6月19日 22時) (レス) id: 9b2e6e7bfa (このIDを非表示/違反報告)
リオン - 桜さん» コメントありがとうございます。頑張ります！ (2019年6月9日 14時) (レス) id: 0d22f7a27a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リオン | 作成日時：2019年1月11日 22時
