夏の大三角関係【歌い手】 (ページ8)

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大三角ページ8

「真冬、Aが居るって本当！？」

突如聞こえた懐かしの声に耳を疑いながら声が聞こえた方のドアを見れば、やはり懐かしい姿が見えた。

彼方君だ。

彼方君の言葉から察するに、彼は私の事を探しているに違いない、なんて。違ったら恥ずかしいけれど。

ちらりと真冬君を一瞥すれば、彼方君を見ながら頬を紅く染めていた。まるで、彼方君に恋でもしれいるかのように。

その顔が私に向けられている訳でも無いのに、私に向けられる顔は酷く冷たい顔だというのに、私の心臓はバクバクと心臓がどこにあるかがハッキリと分かってしまう位に音を激しく立てていた。

しかし、やはり私の名前が気にくわないのだろう。

またも真冬君の冷たい視線が私に刺さってきた。

そんな顔に、泣くのを我慢するが、喉が痛くて堪らない。何故人は泣くのを我慢すると喉がこうも酷く痛くなるのだろうか。

「Aｯｯ……！！」

ふと感じた温もりに、喉の痛みがふっと和らいで胸に絡み付いた鎖がするすると崩れていくような気がした。

「彼方く……！？」

きつく、きつく、鎖を外してやったんだからとでも言いたいのか、彼方君は私の体を腕で拘束してくる。体は痛く苦しいのだが、心は酷く暖かく心地良かった。

ふと、彼方君の背中から見えた真冬君の顔が、

酷く、苦しそうな顔をしていた。
今の私じゃ比にもならないような苦しそうな顔。

その中には嫉妬という感情も含まれていた。