箱学天才マネの短編集

雪合戦 1 ページ47

真波 山岳side.

先輩達が引退してしばらくした頃。
箱根では、雪が降っていた。
山に走りに行くことが出来なくて、退屈で仕方ない俺は窓の外を見ながら授業に参加していた。
珍しく俺が授業に参加しているのには、山に走りに行けない事ともう一つ理由がある。
それは…

｢Aーーー！！！見てみてーー！！ゆきーーー！！！！｣

外から聞こえる有ちゃん先輩の声。
そちらに目を向ければ、先輩達が目に入る。

そう。俺が授業に参加しているもう一つの理由は、もう部活では会うことがほとんど無くなってしまった先輩を見るため。
こんな不純過ぎる理由を委員長に言った日には、すっごい怒られそう。

｢A先輩、手振ってんぞ｣

後ろの席の裕貴がそう小声で教えてくれる。
先輩の方を見れば、裕貴の言う通りこちらに向かって手を振る先輩。
見えてるかどうか分からないけど、小さく手を振り返す。

ここ3階ですけど、良く見えますね。
とか色々言いたい事はあるけど、多分俺も先輩がここにいたら速攻見つけられる自信があるから、多分そういうことなんだと思う。

先輩は寒そうにしながら、列へと入っていった。
体育は合同でやるため、荒北さんや東堂さん、新開さんもいてＩＨメンバーの先輩方とマネージャーの2人が揃う。

何やら、有ちゃん先輩が先生に言ってるみたいだ。
全然何言ってるか分かんないけど。
何となく、有ちゃん先輩が提案して、先生に却下されて、不貞腐れて福富先輩が宥めてるって言うのは分かる。
きっと、また突拍子もない事言ったんだろうな〜。
A先輩と東堂さんが呆れた顔してるし。

なんて、国語の先生の声を右から左へと聞き流して、先輩方の観察をする。

準備運動中、暇だったから授業を少し真面目に受けてみることにした。
でも、やっぱり生きている心地がしなくてつまらなくて退屈で外に視線を移した。

そしたら……。
俺が見ていない、たった数分の間に何故か雪合戦が始まっていた。

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