待つということ ページ6
迷子になったら絶対にそこから動かないこと。
そしたらーー
ざわめきが遠くに聞こえる。
テレビ局だと言うのにここはほとんど人が通らない。
Aは吸い寄せられるように廊下の突き当たりにある窓ガラスにもたれ掛かり、重力に身を委ねてしゃがみ込んだ。
単純に言えば迷子である。
音楽番組の収録のためテレビ局に訪れていたLE SSERAFIMは先程事前収録を終えた。
楽屋へ戻る前に一人御手洗へ行ったAだったが、楽屋とは全くの反対方向へ移動してしまったのか、自分の居場所を完全に見失ってしまったのだ。
この歳にもなって迷子になるとはとため息が漏れる。収録終わりだったためスマホも手元にない。
仕方がない。戻りが遅ければきっと誰かが迎えに来てくれるだろう。
幸い次の出番までしばらく時間があったはずだ。
自分にそう言い聞かせると窓から見える雨が降り出しそうな曇天に心を放り投げた。
幼い頃からぼーっとしている子供だった。
家族と街を歩いていても、ショーウィンドウに気を取られている間に家族においていかれてしまう。デパートでも、テーマパークでも、絶対にAは迷子になった。
両親はAに「迷子になった時はその場から絶対に動かないこと」と何度も言い聞かせた。
基本的に勝手にフラフラしている訳では無いから、元居た場所に戻れば娘に会えると分かっていたからだ。
そしてその場でじっと待つAを見つけて呼ぶのはいつも一番上の兄の役目だった。
少し離れたところから名前をよんで、Aが近くに来るまでその場で待っていてくれる。
Aはそのほんの数秒の時間がとても好きだった。
目の前までやってくると差し出してくれる左手も、隣に並んでから一緒に歩き出してくれることも、だけど歩幅はほんの少しだけ広いところも。
「A」
こうやって優しく名前を呼んでくれるところも、Aは大好きだったのだ。
空を見すぎたせいで目の前が一瞬真っ暗になる。
廊下の曲がり角、数メートル先に立つ兄は今日は左手だけではなく両手を差し出している。
少しだけ眉毛が下がった笑い顔が記憶の中のそれと重なる。
すっと立ち上がると、Aは少しだけ早足で兄に近づき、子供の頃ときよりもっと広くなった胸元へ飛び込んだ。
「お兄ちゃん」
迷子になったら絶対にそこから動かないこと。
そしたらーー
そしたら絶対に俺がAを見つけるよ
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N S(プロフ) - :)さん» 更新が滞っており申し訳ないです。好きと言っていただけて嬉しいです。応援頂きありがとうございます🙏🏻 (1月26日 7時) (
レス) id: 2a191afe61 (このIDを非表示/違反報告)
N S(プロフ) - :)さん» コメントありがとうございます。ご連絡頂きました作品は当方が執筆したものではございません。また「NS」のアカウント以外で(外部プラットフォームや、SNS含む)執筆活動を行ったこともございません。 (1月26日 7時) (レス) id: 2a191afe61 (このIDを非表示/違反報告)
:)(プロフ) - https://uranai.nosv.org/u.php/novel/lrf__svt__0513/?fp=3 こちらになります、初めてのコメントで長々と失礼致しました。N S様の作品がとても好きです、いつも応援しています。 (1月25日 2時) (レス) @page2 id: 618e80dc3b (このIDを非表示/違反報告)
:)(プロフ) - コメント失礼致します。LE SSERAFIMの天使(チョンサ)という作品があるのですが作者様の作品でしょうか？あまりにも内容が酷似しているためコメントさせていただきました。ご確認のほどよろしくお願いいたします。 (1月25日 1時) (レス) id: 618e80dc3b (このIDを非表示/違反報告)
N S(プロフ) - つーじさん» コメントありがとうございます。ゆっくりと書いて参りますのでお付き合いいただければ幸いです。 (9月13日 2時) (レス) id: 2a191afe61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：N S | 作成日時：2023年9月11日 23時
