65：誰そ彼コントラスト ページ20
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その後､コネシマ､鬱､シャオロンへ同様に訓練対象となって貰い､特殊工作班工作員のCQC訓練は閉幕を迎えた｡
身内の人間で行った訓練なんぞ腑抜けたものだ､と思われるかもしれない｡しかし残念､コレはただ単に身内の人間へと仕掛けた､そんな生温いCQC訓練ではない｡
態々俺たちが訓練対象を幹部長のみにしたのには､遠慮せずにいくからな､という意味合いも込められてある｡事実､あのトントン相手に一瞬でも怯ませる事が出来たのだ｡誰でも良いから､この自慢を披露させて欲しい｡
かと言って､本当に気絶させるまでするつもりは無い｡当たり前だが､大切な仲間を行動不能にさせるのは御法度である｡それも含め､正に暗黙の了解､という事だ｡
夕食の時間になるまでの暇潰しとして､自室の椅子に深く腰掛けて書類を進めていたその手をピタリと止める｡
……あ､またいつの間にかペンだこができていやがる｡
どたばたと色濃い一日の終わりが､地平線の向こう側へと現れていた｡
──
夕食を摂った後にそそくさと自室へと戻り､直ぐに書類へ手を付ける｡既に陽は落ちきり､全ての境界線が曖昧になっているのにも関わらず､灯りも点けずに只々その手を動かしていた｡
あと少し｡あと少しで､来週提出分の書類が終わるのだ｡
俺がここまで急ぐのにはとある理由が有る｡戦争が間近に迫って来ているから､ではない｡総統に宣言した通り､望んでこの戦争で殉職するつもりは更々ないし､ここで俺が無様な死を迎えては士気も落ちる｡
この書類は､その後の未来の為の物だ｡
今回の戦争となど比にならない程──寧ろ､比べなくとも解る程に､悲惨で残酷な未来を約束された我々にとって､今最も危惧すべき存在は連合諸国の頂を牛耳るあの帝国だ｡
その準備をα国との戦争と並行しながらする必要がある｡
だからこそ､この書類を今直ぐにでも片付けてしまいたかった｡
『あと､二枚……』
好い加減に紙面と文字の境界線すら曖昧になってきており､仕方が無くペンをスタンドに突っ込んで灯りを点けた｡
眩しさに瞳を何度か瞬かせ､書類に取り組む｡
たった残り二枚の書類が漸く終わり､来週提出分が完成出来たのは､それから数時間後の話だ｡
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作者名：Youtopia | 作成日時：2021年9月10日 22時
