45：甘味はアッサムティー ページ47
*
コネシマが本を選び終わり､どっぷりとのめり込んで二冊目の本へと手を伸ばした頃｡シャオロンが漸くその身体を起こした｡
Sha｢……ん……どこや､ここ？｣
『やっと目覚めたか』
拳骨が強過ぎたことが原因か､はたまたベッドに放り投げたことが原因か……何れにせよ､人のベッドで呑気に眠りこけたとは良い度胸だ｡
寝惚けたまま目を擦る彼を尻目に､紅茶を淹れ始める｡ふわりと芳醇な香りが漂ってきた｡
『シャオロン､蜂蜜は好きか？』
ここ最近､蜂蜜が
Sha｢まぁ普通やな､飴とかよく舐めるし｣
『そうか､食べられるのなら良い』
返答をしっかりと聞いた俺は､すぐに棚から瓶を取り出し､蜂蜜を少しだけ垂らした｡そして全体的に馴染ませるようにスプーンでからころと混ぜ合わせる｡少しばかりとろみが出た液面は黄金色に輝いて見えた｡
出来たぞ､と人肌並みの温さになった蜂蜜入りの紅茶を差し出す｡
『書類仕事をきちんと熟してくれるのはこの上無く有り難いが､それで倒れたら本末転倒だぞ』
Sha｢え……あ､なんで分かったん？｣
彼の下瞼に薄らとついた隈｡きっと隠していたのだろうが､あの件以来､俺自身はより敏感になり瞳と瞼を無意識に観察していた｡ここで役立つとは思いもしなかったが｡
『──蜂蜜の効能のひとつに疲労回復効果が有る｡迷信の可能性は高いが､栄養価が高い事に変わりはない｡一息つき過ぎない程度に一息つくように､な』
冷めないうちに飲め､と促せば彼は恐る恐るカップを手に取りゆっくりと飲み始めた｡
Sha｢ほっとする味やな｣
彼がはふっ､と一息つく｡
Kn｢なんやシャオロン､起きたんか｣
読書はもう満足したのか､自前の赤縁眼鏡を掛けたままコネシマが戻って来た｡
よっこらせ､とシャオロンの隣に腰を下ろす｡
『御眼鏡に適う本はあったか？』
Kn｢あぁ�狷�･猛毒耐性の付け方�瓩箸�｣
Sha｢毒！？お前耐性あんの！？｣
『無いな』
Sha｢いや､無いんかい！｣
昔､興味本位で毒物を口にしてみたいと思った事があったな､なんて懐かしむ｡その際に研究も兼ねて実戦したが､痛い目を見たんだったか｡今となっては良い思い出だ｡
気付けば､あっという間に陽が西の彼方へと傾き始めていた｡
*
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作者名：Youtopia | 作成日時：2020年11月8日 17時
