44：渋味はウバティー ページ46
*
『お､目が覚めたか』
丁度紅茶を淹れている最中に､ソファに座らせた狂犬チワワ──元い､コネシマが先に目覚めた｡
因みに片割れであるもう一匹の狂犬こと､煽りポメラニアン──シャオロンは寝かせる場所が無かったため､仕方がなく俺のベッドに放り投げた｡……気持ち良さげに眠りこけやがって｡
Kn｢ここは……クリアの部屋か｣
『あんな通路のど真ん中で大乱闘を繰り広げられたら､堪ったものじゃないからな｡皆の平和の為に強制的撤退させた』
むっくりと起き上がった彼に淹れたてほかほかの紅茶を差し出す｡
「これでも飲んでおけ」
Kn｢……いや俺､紅茶飲めんのやけど｣
『まぁ､騙されたと思って飲んでみろ』
彼は頭上に疑問符を浮かべながらカップを手に取った｡
俺は直後の彼の反応に､かなりの自信がある｡何故ならば──
Kn｢……ｯ！飲める！？｣
『だろう？ウバという茶葉なのだが､甘くないのにすっきりした渋味で飲みやすいんだ｡甘味が苦手なお前にはぴったりだと思って』
ふふん､と腕を組んで紅茶について力説した｡
彼は兎に角甘味が苦手だ｡人間が感じる甘さは勿論､ちょっとした甘さでさえ吐きかけることが多々あったらしい｡いつか彼に出す紅茶は渋味や苦味の強いものを出そう､と決めていたのだ｡
この様子を見る限り､結構気に入ったようで良かった｡
Kn｢態々､俺の為に用意したんか｣
『いや､俺の趣味だな』
Kn｢ふーん､趣味ね……ま､ありがとな｣
彼はポリポリと頭を掻き､グイっと一気に紅茶を飲み干した｡
Kn｢ごちそーさん｡ちょっと本見てもええか？｣
『お粗末さま｡構わないぞ』
すっかり忘れていたが､このような挨拶を欠かさず行ったり､かなりの読書家である辺り､彼の性根はやはり生真面目であると改めて思い知らされる｡流石､御師匠が評価するだけはある｡
そんな彼は本棚の前に立ち､適当に本を選び始めた｡
*
45：甘味はアッサムティー→←43：狂犬二匹､飼い主に手を噛まれる
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作者名：Youtopia | 作成日時：2020年11月8日 17時
