34：頭上注意の勧告は忘れずに｡ ページ36
*
「──副総統様､夕食のお時間で御座います」
メイドのその声にショッピと俺はハッとする｡俺たちは紅茶を飲み干した後も､和気藹々と話し込んでしまっていた｡
『……』
昨日の記憶が甦る｡
──アイツに合わせる顔がない｡
Shp｢じゃ､俺は行きますね｣
そんな俺を見兼ねてか彼は立ち上がり､御馳走様でした､と残してさっさと出て行ってしまった｡
『……情けない､だろうな』
一人きりになった部屋は酷く冷たかった｡
──
自室に月明かりすら差し込まなくなった頃──｡
『ふー……少し身体が鈍ったかもなぁ……』
俺はこの国一番の絶景を眺められる､秘密の場所に居た｡
この城の天辺､この国を掲ぐ紅の下｡人ひとりだけが支柱の周りを歩けるだけの狭さ｡
……この場所を知っている人間はたったの二人だけ｡
建国に関わっていたからこその賜物である｡
ゆっくりと夜空を仰げば､そこら中に点々と星が瞬く｡ほぼ真上から､月は俺を見下ろしていた｡
……ｯ､ﾀﾝ､ﾀﾝｯ､ﾀﾞﾝｯｯ
誰かが上ってきたようだった｡お迎えか──｡
ﾀﾞｧﾝｯｯ！！
？？｢ｯはぁｯ……｣
誰かは判らないが､カツカツと慌ただしく靴音を鳴らしながら周りをぐるりと歩き回っている｡この靴音の響き方からして､恐らく……｡
責めてもの思いで気配を殺した｡
Zm｢……ｯﾁ､おらんやんけ､あの野郎｣
ﾀﾝ､ﾀﾝｯ､ﾀﾝｯ､ｯ……
やはり､来ていたのはゾムだった｡かなり苛々しながら下りて行ったらしい｡
だがしかし､奴はここを調べようともしなかった｡慌てていたのがひとつの要因とも取れるが､その可能性は零に等しいだろう｡
何故ならば､あいつはこの秘密の場所を知らないからだ｡
……となれば､答えはひとつしか有り得ない｡
『──態と､か｡……クソ……』
その執拗さに､思わず悪態が漏れ出た｡
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作者名：Youtopia | 作成日時：2020年11月8日 17時
