33：ストレートティー ページ35
*
Shp｢そう言えば､アレからどうなりました？｣
唐突に飛び出した言葉｡示されたアレが何か解らず､そのまま聞き返す｡
『アレから……とは？』
Shp｢書類仕事怠慢事件｣
『え､あぁ……』
ショッピが付けたのかは定かでは無いが､長ったらしくも的確な事件名ですぐに解ってしまった自分が恐ろしい｡
『鬱には取り敢えずやる気スイッチを入れてきた』
Shp｢あの人やる気スイッチあったんや……｣
『鬱は善くも悪くも､人の言葉に左右され易いんだよ』
最後の一口となった紅茶をしっかりと堪能する｡彼はまだ半分しか飲んでいなかった｡
月は未だゆらゆらと揺らめきながら浮かんでいる｡
Shp｢──あの後､先輩から何があったの聞いたんすけど｣
本当に奴は口許が緩いな､と彼の言う先輩に対して悪態を吐きながら次の言葉を待った｡
Shp｢クリアさんカッコよすぎませんか｣
俺の脳天に雷電が落ちた｡確実に落ちた｡
あまりの衝撃に俺は何度もその一言を反芻させた｡そして漸く出てきた一言｡
『……カッコ､よすぎ？』
Shp｢はい｡……俺変なこと言いました？｣
どストレートな彼のカミングアウトに､自然と顔に熱が集まるのが分かった｡──恥ずかしいが､擽ったい｡
嘗てこれほどまでに素直な感想を聞いた事が有っただろうか｡
耐性の無い俺は火照った顔を見られたくないが為に俯いて尋ねた｡
『……ｯ何故､そう思ったんだ？』
Shp｢何故､ですか……｡言葉足らずですんませんが､あの時確実に怒っていた筈なのに､優しい方やなぁ､とそう思ったからですかね｣
優しさ──俺には無関係だと思っていた｡
しかし､彼からポロリと零れ落ちたその言葉は､俺にとっては嬉しくて堪らなかった｡
『ふふ､君は面白いことを言って退けるな』
Shp｢あ､ありがとうございます？｣
いつの間にか収まった顔の火照りに内心感謝しつつ､真直ぐに彼を見据える｡
何故褒められたのか解らず､困った顔で紅茶をちびちびと啜る彼に､奴がいつまで経っても可愛がっている理由がよく解った｡
──いつか絶対に奪ってやろう｡
*
34：頭上注意の勧告は忘れずに｡→←32：御茶会 with 後輩君
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作者名：Youtopia | 作成日時：2020年11月8日 17時
