27：罠には罠を ページ29
*
Zm｢こうやって対面すんの､ホンマに久々やな｣
『もう三年以上はやっていない筈だ』
稽古場に作られた半径約五メートルの円形のフィールド内で対面に佇むゾムと俺｡周りで稽古していた訓練兵は､その物々しい雰囲気に固唾を飲んで見守っていた｡
『始めようか｡一等指導兵､審判を頼む』
今回は�犇畧槎狼七慮鏑瓩�｡
ゴムで模ったポケットナイフ一本と体術だけが武器となる｡ナイフは使い方次第で痣や内部出血になる｡
そして稽古でのルールはこうだ｡
＊フィールド外に身体がつけば失格
＊指定された武器以外を使用すれば失格
＊相手が気絶状態(戦闘､行動不能)になれば勝利
＊相手が降伏すれば勝利
……となる｡
Zm｢絶対勝ったるでな｣
『安心しろ､負ける気しかしないさ』
「それでは､両者構えて……」
この場に静寂が流れる｡しかしその空気は一層重く､悍ましい雰囲気へと移り代わった｡
「──始めｯｯ！」
合図の後､初めに動いたのは──｡
Zm｢先手必勝ｯ！｣
床を思いっきり蹴り込み距離を詰められる｡一見ただ突っ込んでいる様に思うが､実は彼が布いた巧妙な罠なのだ｡
彼はコレをする事によって､油断して後先考えずに動く相手を秒コンマ単位で見切り､決定的な一打撃を与えて来る｡
ﾄﾞｶﾞｯ
『まぁ俺には効かないんだがな』
瞬間､彼はフィールド外直前まで吹っ飛ばされた｡
Zm｢ｯｹﾞﾎ……やるなァ！！｣
結構痛い筈なのだが､それでも尚嬉しそうだ｡
彼から決定的な一打撃を喰らわない為にはどうすれば良いのか｡方法はひとつ｡罠には罠を仕掛けるべし｡
飛び込んで来る彼の首元を目掛けてナイフを払う｡コレが俺の仕掛けた罠だ｡
しっかりと考えた騙し業を殺気を込めて少々早めに繰り出した｡
思惑通りに彼はチャンスとばかりにそのまま突っ込んで来た｡
狙っている獲物と引き替えに鳩尾に向けて足を差し出せば､全く力を入れなくとも勝手に彼は吹っ飛ぶ……という算段だ｡
見事に､そして華麗に決まった｡
『返し業､ってな』
Zm｢そんな余裕ブッこいとって大丈夫か？｣
先程まで蹲っていた彼の拳がすぐ傍まで迫っていた｡
ｶﾞｯ
対応し切れずナイフを持った手で受け止める｡そんな俺を見て奴は厭らしく口を歪めた｡
左の視界からナイフが迫る｡
『しまｯ──』
ナイフを受け止められず､そのまま鳩尾に減り込んでしまった｡
Zm｢ｶﾊﾊﾊｯ､御返しや｣
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作者名：Youtopia | 作成日時：2020年11月8日 17時
