いち。 ページ4
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大学が終わって今日もバイトだ。
特にこれと言って欲しい物があったりするわけではないが
洋服やらコスメやら衝動買いすることが多いので備えあれば憂いなしだろう。
制服に着替え、エプロンをつけ、カウンターに立つ。
高校時代からこのカフェに勤めているので、
すっかりこの場所が私の定位置になってしまった。
背筋をしゃんと伸ばして、お客様を待つ。
からんからん。
『……いらっしゃいませ。』
無理に笑うことはないと店長が言ってくれるおかげで変に気負わず仕事ができる。
わたしは表情の変化が乏しいのでその言葉だけでもだいぶ救われているのだ。
……嗚呼、いつも来る人か。
何か月ほど前だろうか、覚えていないがいつの間にかわたしの前はこの人の定位置になっていた。
まあ別に特に話しかけたりしてくるわけでもないので気にしていないのだけれど。
いつもPCを持って勉強をしに来ているみたい。
同い年だろうか、年上だろうか。
……まあいいか。
「アイスコーヒーで。」
『アイスコーヒーがおひとつ。』
慣れた手つきで伝票を取り、コーヒーを淹れる。
カラカラと数回かき混ぜて目の前を見ると上の空な様子でこちらを見ているお客様。
『お待たせしました…？』
「あ、すんません。ありがとうございます。」
はっとしてちゃんとグラスを受け取ってくれた。
珍しいな、この人がぼーっとしてるなんて。
まあでもわたしが気にすることではない、仕事に戻ろう。
目の前のお客様もPCを開いて勉強をするわけだし。
グラスを磨いて、コーヒーのストックを作って、…？
凄い音がする、ズゴーッて……ストロー？
目の前に視線をやるとPCを睨みながらストローを吸う人。
『……あの』
「え、あ、」
わたしが声をかければしっかりと目を合わせてくれる。
『………コーヒー、おかわり要りますか？』
「……お願いシャス。」
そう返事をしてグラスをカウンターに乗せ、俯いてしまった。
……よくわかんないなあ。
…あ、氷ももうない。入れてしまおう。
2〜3個、カランカラン。
既定の量より少し多くコーヒーを淹れておこう、よく飲むみたいだし。
………ストロー、ボロボロだ。新しいの……。
『どうぞ。』
赤茶みたいな、栗色みたいな、表現しがたい髪の隙間から綺麗な瞳が覗く。
色素の薄そうな、綺麗な目だな。
「……ザス。」
おずおずと、丁寧に、両手で受け取ってくれる。
………丁寧な人だな。
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作者名：NPC | 作成日時：2020年4月13日 16時
