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定期考査が始まった事で忙しさを増していたロレッタは、それからしばらくガリオンと会わなかった。図書館は既に、血眼で勉強をしようとする生徒で溢れかえっていたため、ロレッタは本を借りて寮の自室で勉強をする他になかったのである。
その定期考査を終えた後でも、ロレッタはガリオンに会えないでいた。他の生徒から聞いた話によると、ガリオンはここ最近、体調不良を訴えてずっと部屋に引きこもってしまっているのだと。
「ロレッタさん」
それなのにガリオンに会えたのは、簡単な理由だった。ガリオンが、ロレッタの元へと出向いてきたのである。
数日振りに見たガリオンは、ひどくやつれていた。血の気のない白い肌に、くっきりとしたくまが浮かんでいる。それに痩せていて、ロレッタは彼女が食事を抜いているのか、あるいは食べてもすぐに吐いてしまっているのではないかと訝しむほどだった。
ガリオンは笑みを浮かべていた。しかしそれは、明らかな作り笑いだった。全身を震わせていて、額にはじっとりと汗が、目元には涙が見える。今にも泣きそうなのをこらえて、必死に笑っていた。
「あの……呪いって、あったじゃないですか。まがれ、っていうの。私、勘違いしてたんです。あれ、呪いだけど、そうじゃなくて。もっと近く、ずっと前からあって……」
こひゅっ、こひゅっ、と、おかしな呼吸音をたてながら、ガリオンは続ける。
「思い出した……思い出しちゃったんです。本当に、ほんの少しだけど。私、どうしてあんな事を忘れて……ごめんなさい、ごめんなさいロレッタさん。あなたのせいじゃない、違うんです」
「ガリオン、ちゃん……?」
そのあまりの異様さに、ロレッタは呼びかけるしかできない。ガリオンははい、と返事をして、まばたきをした。その拍子に、涙が一筋流れる。それをきっかけに、ぽろぽろと涙が溢れた。
「私、次のウィンターホリデーで一度家に戻ります」
怖いけれど、とガリオンは言う。
ガリオンは何を思い出したというのだろうか。それは、この前尋ねてきた頭の事に関係しているのだろうか。それとも、あの呪いの事なんだろうか。
ガリオンは、何に怯えているのだろうか。
「ロレッタさん、助けてくれてありがとうございました。これが最後のお願いです。……私が帰ってきても、信じないでください。どうか、全て忘れてください」
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