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「ローア家、ローア家かぁ」
ガリオンへの見舞いを終えたロレッタは図書館へ来ていた。よく手入れされ埃一つとしてない本棚を、指でなぞる。
ローア家。魔法史の授業で聞いた事がある。
魔法薬学の基礎を築いたカラミティ・ローアを始祖とした純血の一族。授業ではただそれだけしか触れられていなかった。
しかし……蔵書を読み漁り、ロレッタはふむと唸る。触れられていなかったのは、それ以外に特徴がなかったからというわけではなさそうだ。むしろ、触れるべきではない特徴が多すぎたとでも言うべきか。
ローア家は民草への圧政や近親での婚姻を繰り返してきたという歴史があるらしかった。ガリオンの父親、現在の当主であるチューベ・ローアとその妻ヘムロック・ローアも、家系図を読み解けば親戚にあたる。
奇妙な事は他にもあった。七人の娘のうち、ガリオンを除いた六人だ。ガリオン以外の娘達に関する記録が、奇妙なくらいに存在していない。純血の生まれとなると、こういった書物に情報が載る事はどうしても避けられないのだと、純血たるキャロヴェッタ家の長女であるロレッタはよく知っていた。
「もうちょっと聞いておけば良かったかなぁ……」
調べれば調べるほど奇妙だ。何か良くないものを隠そうとしているかのような、そんな気配がするような。ロレッタは本を本棚に戻す。
そして、適当な本棚からいくつか本を抜き取り、受付で借りる。ガリオンに頼まれていたのだ。暇を潰すための本が欲しい、と。
頭を打ったから、とガリオンはしばらく保健室で様子を見る事になっているらしかった。無事だのに、とガリオンは不貞腐れていた。眼球が変色し色盲になった事を無事と呼んで良いのか分からなかった。多分無事ではない。
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