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「え？わぁ、これ本当に良いんですか？」
その日は授業が午前に終わった。ガリオンに教えられたケーキ屋でクッキーやマフィンなどの、比較的食べやすいお菓子を買っていく。それらの詰まったバスケットを手渡すと、ガリオンは嬉しそうに微笑んだ。まるで悪意のない、純真な笑顔。
ロレッタは微笑みを返しながら、思う。ガリオンは本当に、何も知らないように見えた。だからこそ、父親の事を……ロレッタがガリオンの父親に抱いている疑念を知られたくなかった。
「ガリオンちゃんってお菓子好きだよね。ガリオンちゃんの地元の有名な食べ物って何があるの？」
「うちは葡萄がよく採れるんですよね。それを使ったワインと、ワインゼリーが有名かなぁ。私、小さい頃からワイン飲んでて」
「……それって大丈夫なのかい？」
「田舎でしたからねぇ、その辺かなり緩かったというか。あ、ワインゼリーはアルコール抜いてあるからロレッタさんも食べられると思いますよ。地元の近場にヴォルフの町っていう場所があって、そこで出すやつは特に逸品です」
言い終えると、クッキーを口いっぱいに頬張るガリオン。本当にお菓子が好きらしい。ロレッタもいくつか食べながら、質問を続ける。
「そういえばガリオンちゃんの下の名前知らないけど、何なの？」
「あえ、いっふぇまへんれしはっへ？」
「こら、口に物を入れて話さない」
ロレッタに窘められ、ごくんとクッキーを飲み込むガリオン。口元の食べかすをナプキンで拭き取りながら、言う。……少しだけ、嫌そうな顔をしている。
「ローアです。ガリオン・ローア。ローア家って知ってますかね。まあ、昔から変な事ばっかりしてる家っていうか。正直言って碌な家じゃないから、あんまり言いたくなかったんですよね」
「ええっと……ごめんね、気にしてた？」
「いえいえ。むしろこちらこそすみません、黙ってて。ローア家ってあまり好かれてないから、言いづらいんですよね。気にしてないですけど」
ガリオンはやれやれ、と肩を竦めてみせた。
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