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「え、私って顔面潰れた事にされていたんですか?」
保健室のベッドに横たわるガリオンは素っ頓狂な声をあげた。包帯が巻かれていたりなどといったような様子はない。無傷……のように見える。疲れているのか、あるいはさっきまで眠っていたのか、半目を擦りながらこちらを見ている。
「本当に大丈夫だったかい?」
「顔面が潰れたとか、そんな事はないですよ!多分顔から結構血が出たからそう見えただけなんじゃないんですかね?」
目を擦り終えて、ガリオンは数回瞬きをする。ふわぁ、と大きな欠伸をして、ようやく半身を起こした。その動きもなめらかで自然なものであり、怪我をしているような動きではない。本当に無傷らしい。
ロレッタは安心した。顔見知りの顔面が潰れるなんて、そんな事を想像もしたくなかったのである。
「あ、そういえばガリオンちゃん」
「はい?」
「えっと、ね……ガリオンちゃんって、お父さんとは仲は良い?」
ガリオンに呪いの事を伝えようとするが、ロレッタは思い留まる。いきなり伝えてしまったら、ガリオンが傷付いてしまうかもしれない。あの紙切れを渡したというガリオンの父親について聞く事にした。
「どうしたんですか、急に?……うーん、あまり仲は良くないです。でも、悪くもないし。父は私達に興味がなさそうなんですよね」
何か裏があるような、隠しているような様子はない。ごく普通だ。ただ自分の思う事実を伝えているだけ、というような様子である。
ロレッタは言葉に詰まった。父親に恨まれていたり、嫌われているような様子があれば、まだ伝えやすかった。だが事実はともかく、少なくともガリオンは父親に呪われるようないわれはないと思っているようだ。
「ガリオンちゃん、ちょっと伝えたい事があるんだ。驚かないで聞いてほしいんだけど……」
「何なんです?そんな仰々しい」
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