【APヘタリア】ドラゴンテイル【ウェ兄】 (ページ31)

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30話ページ31

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「ねえ、まだ時間ある？」

冷めきったカフェラテを飲み干したタイミングで、彼がそう言う。私が頷くと嬉しそうにベンチから立ち上がった。私に手を差し伸べるその姿は、まるで馬車から降りる女王陛下をエスコートする王子様のようで。私はその手を取って立ち上がる。

「招待しちゃおうかな、俺たちの城に」

彼はそう言って私の手を取ったまま歩き出した。大通りに面したタクシーステーションで、先頭のタクシーにのりこんで彼は今いる場所から随分と遠い住所を言ってのけた。電車で行けばそれなりの値段で済んだはずのところを、タクシーでの移動にしたのはただの思いつきかなにか理由があるのか。

1時間半ほどタクシーに揺られて、着いたのは大きな庭付きの一軒家だった。薔薇が植えられた見事な庭の花壇に、何を言っているかまでは聞き取れないけれど外まで聞こえてくるほどの大きな話し声。そして彼はシーっと口に人差し指を当てて、こっそり家に入る。ついておいで、そんな風に手招きをするので私もコソコソと彼の後ろを着いていく。

「だから！フットボールの試合で勝ってもニヤニヤすんなってシェアハウスのルール決めただろうが！！」
「ハッ、強くなってから出直せ、クソザコ兄上！！」
「絶対近所迷惑だからもうちょっと静かにしない……？」

そんなやりとりに彼が頭を抱える。もっと殺伐としたやりとりを想像していた私にとっては、彼らのやり取りは衝撃的だった。そんな私たちの元にパタパタと駆け寄ってくる赤髪の青年。

「ウェールズ！帰ってたなら言ってよ！俺にはもうこの2人手に負えないよ！」

彼は私に気がついていないようで、私と目が合うと酷く驚いて、誰よりも大きな声を出した。

「もう、のんくんってばうるさい！」
「だってだって、知らない子がいればびっくりするよ！」

なんだなんだと寄ってくるアホ毛の飛び出た濃い茶髪の男性に、イングランド。おそらくのんくんと呼ばれている赤髪の青年が北アイルランドさん、消去法的に濃い茶髪の男性がスコットランドさんなのだろう。ウェールズさんは私の肩を抱いて言う。

「この子はA、俺ん家の子で、それから……､その……、えっと……」
「んだよ、はっきりしろよ」
「みんながみんなスコくんみたいに無神経だと思わないで！」
「喧嘩売ってんのか！」
「うーん、その発言が誰よりも無神経っていうか」

まるでコメディ映画を見ているかのようなテンポのいいコミカルな会話のおかげで、緊張がほぐれていく。