18話 ページ19
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ここ1ヶ月間で、イングランドが私たちのオフィスに訪ねてくる回数はかなり増えたようになったと思う。彼はいつも難しい顔をしてイングランドと会議室向かっては、私たちの前では何事もないかのように振る舞う。それでも彼は最近忙しくしているようで、毎日慌ただしい。
今日も彼はイングランドに呼び出されて会議室へと向かい、ずいぶんと長く話し込んでいるようで終業時間になっても彼は戻ってこない。日誌や書類はデスクに置いておいて欲しい、と彼は言っていたため同僚たちはさっさと帰りだした。
(迷惑かもしれないけど)
人気の無くなったオフィスで私は彼を待っていた。
終業時間を1時間ほど過ぎた頃、彼は疲れた顔をしてため息をつきながらオフィスに戻ってきた。私がいることに気がつくとすぐにいつものように何事も無かったような顔に戻る。
「まだ帰ってなかったの?」
「少し、あなたと話したくて……。時間、大丈夫ですか?」
「いいよいいよぉ、どうしたの?」
彼は嫌な顔ひとつせずそう言って、私の隣のデスクチェアに座った。私がなんと切り出せばいいのかと考えあぐねているうちに、何かあったのではないかと心配そうに私を見つめる彼。私は考えがまとまらないけれど、口を開いた。
「最近、イングランドがよく来ますよね」
「そうだねぇ」
「何かあったんじゃないかって、思って……」
煮え切らない私の言葉尻。彼はうんうんと優しい表情で頷く。私が俯いたまま何も言わないでいると、彼は小さく笑って言う。
「なんだ、そんなことか。大丈夫だよ、君たちが心配するようなことはないから」
だから安心して、と。頬杖をついて笑いながら言う彼。先程の疲れた顔とため息を見てしまえば、それも簡単には信じられない。私がどれほど不安そうな顔をしていたのだろうか、彼は私の頬を軽くつまんで強制的に口角を上げさせた。ふざけて笑うように彼は言う。
「俺は笑ってる方が好きだなぁ」
「……ウェールズさん、ふざけないで答えてください。どうしてイングランドとあんなに会うんですか?」
「……困ったなぁ」
私の頬から手を離して、彼は眉尻を下げる。しばらくの沈黙の後、彼はデスクチェアに寄りかかりながら天井を見上げて呟く。
「実はね、連合国でシェアハウスをすることになったんだ」
「それって、つまり、イングランドたちと住むってこと、ですか?」
「そうだね」
なんともない風に彼は笑った。
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