【APヘタリア】フォアローゼズに溺れたい【スコ兄】

10杯 ページ10

*




なぜだか耳まで赤くした彼、その理由はアルコールだけでは無さそうだ。単なる照れなのか、それとも別の何かを期待していいのか。それにポロッとこぼした『弟』という言葉を私は聞き逃さなかった。
(弟、いるんだ)
彼についてまたひとつ知れたことは嬉しくて、ニヤケを隠すために私はグラスに残った氷が解けて薄くなったフォアローゼズのハイボールを飲み干した。

「マスター、フォアローゼズのハイボールください」
「はいよ」
「一番いいやつな」
「はいはい」

相変わらずそっぽを向いたままだけど、彼は私の注文には口を挟んだ。マスターがフォアローゼズを用意している間、貰ったばかりのジッポを使ってみたくて私は鞄からマルボロを取り出した。彼に吸わせてもらった煙草よりも安くて、フォアローゼズを飲んだあとだと、やはりとても吸えたものでは無いけれど。

「ゴールドか」
「吸う？」
「1本くれ」

私が自分用に1本取り出して彼に箱を差し出すと、彼も1本取り出して私のそばに置いた。
(私にジッポあげちゃったからライターないのか)
それには気づいたけれど、慣れないジッポに手間取って随分時間がかかってしまった。私がやっとのことで煙草に火をつけることができた頃、それでも1分とかかってないはずだけど、彼は煙草を咥えたまま欠伸をしていた。

彼にジッポを渡そうとすると、つけてくれと言わんばかりに煙草の先端を差し出した。私がもう一度火をつけようと悪戦苦闘していると、彼は私の顎を掴んでそのまま私が咥えている煙草の先端に彼の煙草を触れさせた。突然の出来事にやっとついたジッポの火も消えてしまった。少し離れて彼は不満そうに言う。

「お前も吸わねえと火がつかねえ」
「あ、……うん」

反論の余地なく、私はジッポを置いて彼の言うとおりに煙草を吸いながら、火のついた私の煙草の先端を彼の煙草の先端に軽く押し付けた。3秒ほどで火はついたけれど、結局ジッポの方が早かったんじゃないかとも思う。お互いに煙草を吸って、一呼吸の沈黙が訪れると、彼は言った。

「お子ちゃまには早かったか？」
「レディに対して失礼じゃなくて？」
「ハハッ、これはこれは失礼」

マスターが用意してくれたフォアローゼズも、ニコチンタールのためだけに吸っていたマルボロには合わなくて。私はさっさと吸い終わらせた。

「ちょっとトイレ」
「……おう」

一瞬眉間にシワを寄せた彼、気がついたけれど私は煙草を灰皿に押し付けてそのまま席を立った。

11杯→←9杯

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す