【APヘタリア】フォアローゼズに溺れたい【スコ兄】

7杯 ページ7

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「……いや誰だよ」

昨夜出会った彼━━スコ兄からもらった電話番号とメールアドレスが書かれた名刺。てっきり彼のものだと思っていたけれど、朝になって見返してみると名刺に印刷されている写真は明らかに彼では無い。短い金髪に、緑色の瞳、太い眉毛だけは彼と随分と似ている。アーサー・カークランドと書かれた名刺、もし彼の仕事相手なのだとしたら名刺を無くすのは相当な痛手なのではないか。

これを口実に、っていうのは見え透いてるかもしれないけれど、彼と飲む酒が人生で1番美味しかったのは事実で。今日の夜にまたクラブに行こうと大学の友達に誘われたのも気乗りしなくて断ってしまった。

二日酔いだからって。しばらく酒なんて見たくないってさ。

本当は昨日飲んだフォアローゼズの甘い香りが忘れられなくて、野性的な荒々しさを持つ彼と針山に刺されるようにスパイシーなワイルドターキーの香りが忘れられない。
(お酒、好きだな)
そんなことを考えながら癖のように煙草に火をつけた。

美味しい酒の前に安い煙草は無力で、吐き出す煙のせいで何個香水を諦めたか。意味の無いルーティン的に吸ってる煙草も潮時なのかもしれない。ゆらゆら揺れてそのまま宙に消えていく煙に、灰になってポロッと落ちる煙草の先端。
(まだ17本あるのに)
買ったばかりの煙草を捨てるのは勿体なくて、でもこれ以上は吸ってられなくて、あんまり放置してると湿気てしまう。

毎日暇があれば吸っていた煙草は一日一本になって、何も無くても毎日安酒をひっかけてた夜も上品にハーブティーなんて飲んで。そして寝る前に『明日はバーに行こうかな』って彼に送ろうとして、結局送れなくて。そんな1週間、たったの1週間で友達は少し減った。

煙草が減る度友達が減って、友達が減ったことには気がつくのに煙草はなかなか減らないように感じる。そして煙草も1週間でいなくなった友達もいらないな、って思うようになっちゃって。毎日のように誘われていた酒の場も減った。彼と出会って1週間ちょっと、私はまたあのバーでフォアローゼズを飲んでいた。

彼に会えないかなって少し期待して、普段はつけない香水をつけて。メールを打っては消す。フォアローゼズの力を借りてやっとの思いで送った文は、送ってからスペルミスに気がついた。カランカラン、とバーの扉が開く音とベルの音が響く。反射的にそちらへ目を向けると、そこには彼がいた。

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