【APヘタリア】フォアローゼズに溺れたい【スコ兄】

For you ページ38

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A列車で行こうをかけた車内。彼女と歌ったのが懐かしい。プレイリストも彼女が好きな曲ばかり。海に背を向けて家に向かって走り出す。昨日から寝ていないのに全く眠れる気がしない。

家に着いたのは夕方。彼女とあけるのを楽しみにしていたフォアローゼズも、結局あけずじまい。俺はフォアローゼズの栓を開けて、瓶に口をつけた。ぐらりとアルコールが俺の脳を侵食していく。鼻抜けも、味も、喉通りも、全てが一級品。

俺だけが飲むのはもったいない。ふらふらと庭に出て、彼女の墓石にフォアローゼズをかけた。黄金色のウイスキーが、珍しく晴れた空に浮かぶ月明かりに照らされてキラキラと輝く。俺の左手の薬指の銀色もまた輝いている。ごくごくと瓶からラッパ飲みをするけれど、まだ足りない。


彼女のところに行くにはまだ足りない。
フォアローゼズに溺れて彼女と同じところに行きたい。


寒空の下でカッと熱くなった顔は、取り返しのつかないほどに涙と酒で汚れた。終わりのない、彼女のいないこの世界をどう生きていけばいいと言うのか。思い出だけを抱えて生きて行けなんて、そんな残酷なことがあるか。

「クソが……」

墓石に寄りかかって浴びるようにフォアローゼズを飲む。夜が明けた頃に、クソ弟━━イングランドがやってきて、気絶するように彼女のそばで眠っていた俺を起こした。フォアローゼズは空き瓶になっていた。ズキズキを痛む頭と心臓、強烈な吐き気。こんな俺を見たら彼女は呆れ返るだろう。

俺は彼女を不安定で危なっかしいと思っていた。しかし、本当に不安定だったのは俺の方だったのだろう。不安定な彼女を支えたいと、救いたいと思っていたが、その実は俺が彼女に支えられていたのだ。

しっかりしろとイングランドが怒鳴る。憎くて憎くて仕方の無いイングランドにすら、こんなに弱った姿を見せてしまっている。彼女のいない日々に1週間で慣れてみせる。だから、1週間だけは情けない俺を許してくれ。

「A、愛してる」

墓石にキスを落として、俺はイングランドに支えられながら家の中に入った。



FourRoses for you.

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