31杯 ページ31
*スコットランドside
シャワーを浴びると、同じシャンプーを使ったせいで彼女と同じ香りがする。フォアローゼズに紛れた淡いアプリコットの香り。先にシャワーを済ませた彼女は、俺が戻る頃には自宅だからかリラックスしてスマホをいじっていた。しかし俺が出たのに気がつくとすぐにスマホを置いて、ペットボトルの水を差し出した。
一口飲んで失った水分を取り戻し、彼女に返すと彼女もそれを飲んだ。彼女はペットボトルで何かを飲むのが少し下手なようで、口の端からつうっと水が零れる。手でその雫を拭う姿に、俺の中のタガが外れるような気がした。
彼女の手を引いて、俺の方へと引き寄せて噛み付くようにキスをする。舌を絡ませて、逃げられないように離れないように腰に手を添えて、左頬に手を当てて。彼女は抵抗しない。唇が離れて、しばらく見つめ合う。
「今夜は1人になりたくない」
「……うん、私も」
もう一度キスをして、部屋の明かりを消した。腹のタトゥーシールは剥がれていた。無理をさせたくない、それは本当だ。国としての本能なのか能力なのか、別の言語も正確に理解出来る俺は彼女がふと発した日本語もわかってしまう。彼女が嫌だと漏らせば辞めるつもりだ。
それなのに彼女が漏らした日本語は『もっと好きにして良いのに』。目にうっすらと涙を浮かべた苦しそうな声に、そんな挑発的な言葉は似合わない。
「だめだ、俺の知らねえお前の、Aの表情を全部見るまでは」
「あはは、日本語でも全部バレちゃう」
彼女が瞬きをすると目尻から涙が伝って落ちる。無理をして笑う彼女が愛しくて、不安定でアンバランスで。彼女の全てが知りたくなってしまう。
「私、あなたと出会って1秒でも長く生きてやるって思ったの」
「なんだよ、いきなり」
気を失うような睡眠から目覚めた時に、狭いベッドで素足を絡めながら彼女は言った。顔に太陽の光が当たると、昨夜遮光カーテンを閉め忘れたことを知る。
「あなたにもっと面白いこと教えてもらわなきゃ」
「……お前の価値観軒並み変えてきたからな」
「お酒、煙草、音楽、次は何を教えてくれるの?」
彼女が上目遣いでそんなことを言う。素肌に毛布が当たっているというのに色香を感じない彼女のあどけなさがアンバランスだ。彼女の額にキスを落として言う。
「お前の可愛さを教えてやるよ」
彼女は照れたような拗ねたような、そんな顔をした。
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おず(プロフ) - おしゃち!さん» コメントありがとうございます💕最後までご愛読頂いた上にそのように言っていただけて嬉しい限りです、ありがとうございます!これからも精進して参ります! (2月25日 11時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
おしゃち! - 完結おめでとうございます!出会いによって人生が変わっていくドラマチックなストーリー、毎話ドキドキしながら読ませて頂きました。ラストの回収が見事過ぎて言葉が出ません🥲︎素敵な作品をありがとうございました!! (2月24日 1時) (レス) id: cebb1c38ee (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - メイベルさん» コメントありがとうございます!一緒にスコ兄の底なし沼にハマりましょう!!アーサーの方も読んでくださりありがとうございます、更新もラストスパート切りましたので頑張ります!お付き合いいただけると幸いです😍 (2月22日 12時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
メイベル - コメント失礼します!!大人っぽい雰囲気最高です!!元々好きでしたがもっとスコ兄に沼りました!アーサーの方の小説もとてもキュンキュンして読みました🥰お身体に気をつけて更新頑張ってください! (2月22日 0時) (レス) id: 40a9933e11 (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - ononon245さん» コメントありがとうございます!以前のもの読んでくださったようで嬉しいです、ありがとうございます🥰スコ兄ということで大人っぽさ全開で書いてみています!楽しんでいただけると幸いです🥰 (2月9日 23時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
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