【APヘタリア】フォアローゼズに溺れたい【スコ兄】

28杯 ページ28

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帰りの車でも、変わりない他愛もない会話をしていた。私が大学をサボってしまったことや、彼も仕事をすっぽかしてしまったこと。家族のこと、これからのこと。ひとしきり話し終えて、チラホラと住宅が見える道を進む車。
(もうすぐ降りなきゃ、か)
私は会話が途切れて、ほんの少しの間を待った後に口を開いた。

「あなたと生きるって決めたら、次会う時にフォアローゼズを飲むね」

ちょうど信号で止まってしまう車。彼はハンドルの上に突っ伏すようにして、ため息をついた。呆れたような、少しばかり嬉しさを含んだような乾いた笑い声をあげて私を見つめた。太い眉を下げて、心底愛おしいと表情で語りながら言う。

「結局、スコッチはバーボンに勝てなかったか」

その瞳にうっすらと涙の膜がかかっていたことには気が付かない振りをした。ここで彼に泣いてるのかなんて聞いたら彼は野暮だと言うんだろう。動き出した車、彼の視線は再び前へと向けられた。その横顔は、運転への真剣さと私の言葉への微かな動揺が見られた。

ほんの少し緊張した空気だけれど、私はふと思い出したことを彼に聞いた。

「そういえば、どうやってエディンバラまで来たの。最後の便は終わってたし、普通の旅客機は5時間で移動なんて無理でしょ？」
「プライベートジェット飛ばした」
「本気で言ってるの？」
「疑うのか？ 5時間で来ただろ？」

簡単に許すことはできなくて、でも彼のいない日々に戻ることもできなくて、せめて彼を困らせたいというイタズラ心と、彼が守ってきたこの大きな土地を見てみたいという好奇心でエディンバラまで来た。そして彼は私のためにプライベートジェットを飛ばしてまでここまで来たと言う。

許さない、なんて言えないほど私を愛して、大切にしてくれていることを示してくれた。私が首を横に振ると得意気な笑みを浮かべる彼。

「いつ帰るんだ？」
「今日帰ろうかな」
「なら今から空港まで送る」

大学を休んで来てしまっているからか、妙な罪悪感がずっとあった。元々身一つで来たので特に荷物も無く、長居する気もなかった。彼はそれを知っているからか、日本よりもずっと緩い交通ルールの中で最善を尽くしてくれた。

空港に着くと次に会う約束をした。チケットを買ってから空港内のカフェで軽くご飯を食べて、飛行機を待って、それから軽くハグをして別れる。離したくないと耳元で言った彼はすぐに私を解放した。

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