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27杯 ページ27

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「なぁ、聞いてもいいか」

潮風が彼のアホ毛を揺らす中、彼は海の果てを臨みながらそう言った。ぷかぷか浮かんでは宙へと消えていく煙草の煙は、彼の指と指の間から。

「なんで俺を許したんだ?」

大方予想のついていたその問い。私にもその答えは分からないし、今も許したと胸を張って言えるかと問われると即答できないだろう。もしも断崖絶壁のこの海で私たちが抱き合って一緒に飛び降りたら、私だけが死んで彼はずっとスコットランドという国が滅びるまで冷たい海の中をさまようのだろうか。

私は彼の質問に対する答えを探しつつ、彼と同じように綺麗色に濁った海の果てを見つめて黄昏れる。彼の煙草は限界を迎えてコーヒー缶の中に押し込められた。人の声はしないのに海の声はごうごうと響いている。

「あなたが何者でも、私はあなたを愛してるって気がついたからかな」
「大層なこったな」
「自分で聞いたくせに」

クククッと喉を鳴らして笑う彼を見て、私は相当小っ恥ずかしいことを言ってしまったと後悔したけれど、他に自分の感情を表せる言葉はなかったの。まぶたに見え隠れする芝生を反射させたような瞳。彼はまた遠くを見つめる。

「人生なんて時間をかけた自 殺の連続に過ぎねえ」
「あなたはそれが永遠に続くんだね」

国が滅びない限りな、と彼は続けた。何千年と生きる彼の生の中で、何度彼は大切な人を失ったんだろうか。平々凡々な人間である私なんかには到底想像出来ないけれど、できる限り彼の気持ちに寄り添いたいと思ってしまったの。

(おれ)と心中する覚悟はあるか?」

一呼吸置いて、彼はそう言った。彼のシャムロック色の瞳は私を決して離さない。ひゅう、と強い風が落ち葉を巻き上げてくるりくるりとダンスを踊る。

「……一緒に飛び降りちゃう?」
「馬鹿」
「あはは、冗談だよ」

タチが悪すぎる、と彼は大袈裟に怒った。
(あなたが飛び降りるって言ったら私は迷わず着いて行ったよ)
私はそのまま冷たい海の中で凍えて死んでしまう、その後のことなどわからない。しかしこのまま生きるとなれば話は別である。

私が冗談交じりの答えをするものだから、彼は呆れ返って車に向かってしまった。もう少し潮風を浴びていたかったけれど、名残惜しいけれど彼の後を追った。

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おず(プロフ) - おしゃち!さん» コメントありがとうございます💕最後までご愛読頂いた上にそのように言っていただけて嬉しい限りです、ありがとうございます!これからも精進して参ります! (2月25日 11時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
おしゃち! - 完結おめでとうございます!出会いによって人生が変わっていくドラマチックなストーリー、毎話ドキドキしながら読ませて頂きました。ラストの回収が見事過ぎて言葉が出ません🥲︎素敵な作品をありがとうございました!! (2月24日 1時) (レス) id: cebb1c38ee (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - メイベルさん» コメントありがとうございます!一緒にスコ兄の底なし沼にハマりましょう!!アーサーの方も読んでくださりありがとうございます、更新もラストスパート切りましたので頑張ります!お付き合いいただけると幸いです😍 (2月22日 12時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
メイベル - コメント失礼します!!大人っぽい雰囲気最高です!!元々好きでしたがもっとスコ兄に沼りました!アーサーの方の小説もとてもキュンキュンして読みました🥰お身体に気をつけて更新頑張ってください! (2月22日 0時) (レス) id: 40a9933e11 (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - ononon245さん» コメントありがとうございます!以前のもの読んでくださったようで嬉しいです、ありがとうございます🥰スコ兄ということで大人っぽさ全開で書いてみています!楽しんでいただけると幸いです🥰 (2月9日 23時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おず | 作者ホームページ:無い。  
作成日時:2024年2月7日 15時

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