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26杯 ページ26

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目を覚ますともう朝だった。時差があったせいかいつもよりもずっと長く深く眠りに落ちてしまっていた。彼は私の隣で本を読んでいて、それがなんだか様になっていて悔しい。

「ドライブでも行くか?」
「……行く」

ニヤリと笑う彼の楽しそうな提案に乗らない手はなかった。彼の愛車は、車に興味のない私でも高級なものだとわかるくらいのものだった。助手席と運転席の2席しかない車に私と彼は乗る。ハンドルを握る彼がかっこよくて胸が高鳴る。

「昨日、よく私がいる場所わかったよね」
「俺の名前忘れたか?」
「……わかるものなの?」
「俺はこの土地と何千年と向き合ってんだぜ」

移り変わる風景。都市のような街並み、絵本の世界のような歴史的な街並み、自然豊かな田園風景。彼の守り繋いで来たものを一気に見ているようだった。まっすぐ前を見つめる彼の瞳は、常に未来を向いているのだろう。私がキョロキョロと目移りしている間に、彼は未来をまっすぐ見つめている。

彼は普段紅茶を飲むけれど、運転をする時はアメリカーノを飲むらしいことを知った。運転する姿さえも初めて見る私は改めて彼のことを何も知らないことを思い知った。

「弟は本当にいるの?」
「まあ、一応な」
「国に弟とかいるんだね、弟も国なの?」
「ウェールズに北アイルランド、それからイングランドだ」
「あー、サッカーのチームとか別だよね」
「フットボール」
「あ、めんどくさいイギリス人出た」

久しぶりに乗った車は案外平気で、中学生や小学生の頃のバス酔いは何か別の種類のものだったのかもしれない。しばらく車を走らせていると景色の中に海がチラついてくる。ビーチと言うよりも断崖絶壁という方が近いような海。それでも海と言うだけでテンションが上がってしまう。

彼は『海、寄るか』と言って車を止める。車外に出ると潮風が肌に沁みるような気がした。足元が悪いからと彼は私の手を取って支えてくれる。崖にかかっている柵のギリギリまで歩みを進めて身を乗り出す。海だ、と私が大きな声を出すと彼は笑った。

「私、騙されてもいいって思ってたけど、本当のことを知ったらあんなに取り乱すんだから、あなたから見たら私って子供だよね」
「そうかもな、……ハハ、危なっかしいレディだよ」

缶のコーヒーを彼は飲み干して、それを灰皿代わりに煙草を吸い始める。私はいらない、差し出された煙草をそう断った。

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おず(プロフ) - おしゃち!さん» コメントありがとうございます💕最後までご愛読頂いた上にそのように言っていただけて嬉しい限りです、ありがとうございます!これからも精進して参ります! (2月25日 11時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
おしゃち! - 完結おめでとうございます!出会いによって人生が変わっていくドラマチックなストーリー、毎話ドキドキしながら読ませて頂きました。ラストの回収が見事過ぎて言葉が出ません🥲︎素敵な作品をありがとうございました!! (2月24日 1時) (レス) id: cebb1c38ee (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - メイベルさん» コメントありがとうございます!一緒にスコ兄の底なし沼にハマりましょう!!アーサーの方も読んでくださりありがとうございます、更新もラストスパート切りましたので頑張ります!お付き合いいただけると幸いです😍 (2月22日 12時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)
メイベル - コメント失礼します!!大人っぽい雰囲気最高です!!元々好きでしたがもっとスコ兄に沼りました!アーサーの方の小説もとてもキュンキュンして読みました🥰お身体に気をつけて更新頑張ってください! (2月22日 0時) (レス) id: 40a9933e11 (このIDを非表示/違反報告)
おず(プロフ) - ononon245さん» コメントありがとうございます!以前のもの読んでくださったようで嬉しいです、ありがとうございます🥰スコ兄ということで大人っぽさ全開で書いてみています!楽しんでいただけると幸いです🥰 (2月9日 23時) (レス) id: 0e6497002e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おず | 作者ホームページ:無い。  
作成日時:2024年2月7日 15時

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