【APヘタリア】フォアローゼズに溺れたい【スコ兄】

21杯 ページ21

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もし扉を開けて、そこにいるのは見知らぬ不審者で。刺されるなり撃たれるなりして私を殺したら、なんてことを考えた。そこに居たのは彼。息は切れていて、少し汗ばんだ彼。急いで来てくれたことが伺える。

「A？ 何かあったのか？」
「……入って」

掠れた声の私を心配そうに見つめる彼。扉を閉めて、それから背伸びをしてキスをした。私がキスをすると、それに応えるように彼は私の頭に手を添えて少し屈む。
(本当に優しいな、この人)
意識ははっきりしているのにグラグラと揺れる頭、重力に従って私は尻もちをついてしまう。

『大丈夫か？』なんて言いながら彼が手を差し伸べるから、私はその手を引っ張って膝をつかせた。そのまま何度もキスをして、戸惑う彼が何かを言おうとしてもそれを封じ込めるようにまたキスをする。ついに彼は少し力を込めて私の身体を引き離して、それから胸にすっぽり抱え込むように抱きしめた。

「どうしたんだよ、何があったんだ？」
「……ねえ、私たち話し合うことがあるでしょ、スコットランドさん」

彼の私を抱き締める力が緩んだ。息を飲む音、強ばっていく顔色、彼が動揺しているのは見て取れた。

「誰から聞いた？」
「……フランスさん」
「……そうか」

諦めにも似たようなため息を漏らして、唇を噛む彼を見ていると苛立ちとやるせなさが込み上げてくる。
(英語、出てこないな)
何を言えば伝わるのか、日本語でしか出てこない溢れる感情の羅列。

「わけわかんない、いつ言うつもりだったの？ テキトーな日本人の女引っ掛けて、少し遊んだら捨てるつもりだった？ 私は本気だった、なのにあなたは私に何も教えてくれなかった！ いつもはぐらかして、裏で馬鹿な女だって思ってたの？」

カッと喉の奥が熱くなって、それから目と鼻の奥がツーンと痛くなって、感情的な日本語と一緒に溢れ出る涙。途中から嗚咽が混じって、鼻水と涙でぐしゃぐしゃになった顔を見られたくなくてうずくまる。みっともない、恥ずかしい、見られたくない、苦しい、そんな自分本位な言葉ばかりが頭に浮かんでは消えていく。

彼は私の日本語を全てそのまま理解したような顔をする。言葉を選びながら躊躇いながら、彼は簡単な単語を繋ぎ合わせてどうにか私に伝えようとする。『俺も本気だ、愛してる』なんて言葉を信じられるほど私は単純じゃなかった。

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