【APヘタリア】フォアローゼズに溺れたい【スコ兄】

20杯 ページ20

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「俺にもよくわかんないけどさ、何千年も生きてるよ。俺もあいつも。国としてね。奪い合って戦争して、同盟を組んで裏切って、そんな歴史そのものが俺たちなんだと思うよ。……人間を乗せる船が俺たちで、船は人間が進もうとするところに進んでいく。無茶をすれば崩れて、資源があればより強固にできる」
「……ごめんなさい……、私、ちょっとわかんないです……」

私の理解できる物事の範囲を大きく越える概念。もう少し勉強していればこれを理解できたのかな、もっと大人だったら理解できなくても受け止められたのかな、私は混乱しながらもどこか冷静な頭でそんなことを考えていた。
(課題の内容忘れちゃったな)
先程まで書いていたレポートの続きは確かに頭の中にあったはずなのに、それを上回る情報量が内容を追い出してしまった。

「……あんまりアイツを責めないでやって」

優しい声でフランシスさん━━━━フランスさんはそう言った。嵐の前の静けさのように、頭の中がすうっと冷えていって、耳鳴りがうるさい。飲んでいたアイスコーヒーの氷は全部溶けきってしまった。

「少し、考えてみます」

私はフラフラと覚束無い足でカフェを出て、気がつけば家に着いていた。ぼんやりと今後のことを考えているうちに、もう日も暮れていた。心臓の鼓動がやけに大きく感じて、秒針の音と重なる。時計を見る度に私と彼の時間の進み方は違うことを思い出す。

冷蔵庫にしまったままの缶チューハイ。彼と出会ってからは飲む気になれなかった酔うためだけの酒。空きっ腹に酒は良くない、そんなことはわかっているけれど何かを食べる気にはなれなくて。アルコールの味、人工甘味料の甘さ、それをかき消すような炭酸。こういう時ばかり上手く酔えなくて。

私は彼に電話をした。呼出音が暗い部屋に響き渡って、プツンと切れる。その後に聞こえる優しくて甘くて愛しい声。何を言おうとしても泣いてしまいそうで、喉の奥が熱くて苦しい。

「会いたい」

やっとのことで絞り出した声は震えていた。私の言葉に二言返事の彼。私が家にいると言えば30分で行くと言って電話を切った。30分なんて今の私にはあっという間で、空いた缶が3つ転がった暗い部屋で一人三角座り。メイクはボロボロになって、何も考えられないくらいアルコールに浸された脳。

彼からの電話が鳴る。家の前に着いたから開けて欲しいって。私は何も言わずに扉を開けた。

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